私立戦国高等学校
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私立戦国高等学校。それは、多分どこにでもあるような普通の学校だ。
まあ、戦国高校なんてヘンテコな名前なのはしょうがない。
創立者だか理事長だかが、戦国時代が大好きなんだそーだ。
そして、2年B組。これも、どこにでもあるような普通の教室だ。
よく学園モノのドラマででるような若干キレイめな教室を想像してくれればいい。
強いて特徴をあげるなら、黒板の上に掲げられた『天下無双』の書だろうか。
それなりの達筆な字で書かれたそれは、学級目標である。
なんでこれにしたの、訳わかんねーじゃん、何目指すの、戦国武将ですか?
という質問には、担任のちょっと変わった趣味なの、エヘッ♪というウザ…愛くるしい回答でご勘弁いただきたい。
そんなことよりもおかしいのは、そのクラスのメンバーだった。
カキィン!
「ハァ…ハァ…お前、こんなんで終わりかぁ!?」
「クッ…お前こそ、随分しんどそうじゃねぇか。」
こう言って、安っぽい演技を交えながらチャンバラをしているのは福島くんと加藤くんだ。
いや、お前らよそでやれよ!
てか、それ銃刀法違反だから!
先生、人生の過ちを止めてやれ!
こいつらだけじゃない。どいつもこいつも、教室でチャンバラしやがって!
武道場でやれって!
無双奥義とか、恥ずかしい必殺技シャウトしてんじゃねぇ!!
かと思えば、「クソイカァァァ!儂の卵焼きを返せぇ!!」という伊達くんの叫び声が響く。
「不義の山犬め!早弁しているのが悪いのだ!卵焼きは皆のもの!はっはっはっ!」
早弁するの早いだろ。早早弁じゃねぇか!
あと、イカうざいから一回刺身になってこい。
そして、ほとんどの生徒が集まった頃、真田くんと義について熱く語っていた石田くんに悲劇が起きた。
「こんの…クソ兄貴ィィィィイイ!」
見事なライダーキックを決めたのは石田(妹)さんだった。
「てか、地の文、(妹)って言い方ムカつくんだよぉ!!
ちゃんと愛奈って名前がありますからぁ!」
「ぐはぁっ…!貴様、いきなり何をする!」
「なんで起こしてくれなかったのさ!?」
おかげで寝癖付いてるし、朝ご飯も食べはぐったのよ!と息を乱しながら怒鳴る彼女の顔は確かに酷かった。
「起きぬのが悪いのだよ!」
「おっはよお!!
今の蹴りはナイスだったぜ、愛奈!」
「また寝坊したのかよ…相変わらず馬鹿だな。」
いつの間にかチャンバラを止めていた清正と正則が言い争いに参戦する。
「というか、どうしてそんなに起きれないのだ?」
「それは…お兄ちゃんを呪い殺すための儀式のせいで寝不足で…」
「いや、そんな理由!?
そんなことしてないで早く寝ればいいものを!」
冷や汗ダラダラの三成と、寝癖ボサボサの愛奈だが、本当は仲の良い兄妹なのだ。
しかし、そんなことを本人に言ったら確実に殺されるので黙っておこう。
「地の文って死ぬの?」だって?
もちろん死ぬさ。無理だとしても、奴らなら殺れる。
会話文だけになっちゃうよ?
すると、ガラッとドアが開いた。
「おい、みんな席に着け〜!
ホームルーム始めるぞ!」