腐った黒子と恋する黄瀬くん

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「…はあ、…うえ…へ、へぇー…」


上記のセリフは、マジバにて赤司と桃井にひたすら“腐”とはなんぞやという事を教え込まれていた時の黄瀬の反応である。
十分に腐れた人種の話をされたが、結局のところ自分と何の関係があるんだと聞けば、ふたりは溜め息を吐いた。


「だから、てっちゃんは腐男子なんだよぅ」


わかった?と桃井が呆れたように言うと、黄瀬はきょとんとした後に驚きで目を開かせた。
腐男子とは、男同士でくっついているホモを見て嬉しがっている男であると聞かされていた為、黄瀬はまさかと首を振る。
黒子がそんな趣味なわけがない、と否定するが赤司はにこりと笑いながら黒子と趣味を共有しているから間違っていないよと言う。


「趣味を共有って…それって赤司も、その、ふ、フダンシって奴ってことじゃないっスか」
「ああ、そうだよ」
「えっ!じゃあ赤司っちてホモが好きなんスか?!」
「声が大きいぞ」


色の違う両の眼でギロリと睨みつけられると黄瀬は委縮して縮こまる。
それからマナー云々と話し出し、更に話が長くなる。これは完全に黄瀬が悪い。
マジバから出た時にはぐったりとしており、ふたりに軟弱だと呆れた目で見られた。しかし、一般人がホモとは、と延々話されていればげっそりするのも仕方がない。


「それで、黄瀬は腐男子な黒子をどう思った?」
「え…」
「黒子の事が好きなのだろ?お前の知らない一面を知った今、それでも好きなのかい?」
「…俺は」



「黒子っち!黒子っちのお勧めの一冊を貸してほしいっス!」
「は?」


翌朝、黄瀬は黒子の元へ突撃するやいなや言った。
突撃された本人は思わず顔を歪めてしまったが、言われた言葉を脳内で繰り返し首を傾げた。お勧めの一冊とはなんだろうか。いきなり言われても困る。


「え、と、君が読みやすいような小説ですと…」
「違うちがう!え、と、その、黒子っちお勧めの同人誌を貸してほしいんス!」


思わず耳を疑った。まさか黄瀬の口から同人誌などと言う単語が出てくるとは思わなかったからだ。
そして溜め息を吐いて、元凶であろうふたりの顔を思い浮かべ、内心で舌打つ。天使に余計な事を覚えさせやがりましたね。
黒子は小さく深呼吸をして黄瀬を見ると、明日持ってきますねと言えば、黄瀬は嬉しそうに頷き楽しみにしてるっス!と笑顔を浮かべたので心の中でごめんなさいと謝った。
翌日、黒子が持ってきたのは、初心者が読むにしては内容が大分ハードな同人誌ばかりだった。
黒子の魂胆としては、それを読んで自分から離れてくれれば幸いだと思って渡したのだが、更に翌日やって来た黄瀬は心なしかげっそりとやつれたした顔をしていたが、この本の内容がよかった、これは自分の好みではない、と感想を言ってきた。


「…黄瀬君は、気持ち悪くないんですか?君はボクが好きだと言えど、別にそういうのが好きなわけでもないんでしょう?」


そういえば、黄瀬はきょとんとし、少し考えた後ににへらと笑みを浮かべ、黒子っちが好きなものだから俺も少しは知りたいから、と言うので、黒子は少しの罪悪感を感じながらも、やはりこのワンコは愛おしいと思う。


「それに、全然知らなかったってワケじゃないんスよ?ほら、俺、モデルやってるし、少しでも自分の人気を知りたいから自分の名前で検索かければ出てくるんス」


夢小説だっけ?あーいうのも、と言う黄瀬に、黒子は目の前がくらりと揺れるのを感じる。
検索避けをかけきれていない二次創作サイトや出回ってしまった画像やイラスト何かが検索で引っかかったのだろう。芸能人の目に知れ渡っている事をこうして直に聞くと居た堪れない気持ちになる。
もしや、自分の小説までも見られていないだろうかと不安を感じた黒子は帰ってサイトの検索避けを強化させようとひとり頷いた。


「それに、モノによっちゃ少女漫画みたいなのもあるよね。なんか共感しちゃうっていうか…凄い、なんか…俺もこうだな、とか…」


頬を掻きながら言う黄瀬はまた他のも貸してくださいねと言って、同人誌が入った袋を置いて教室を出て行った。


「…黄瀬君、中々手ごわい天使ですね…」









(それにしてもガチものはダメでしたか…まあ、彼は主受けが好きそうですし…)

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