腐った黒子と恋する黄瀬くん

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いつもの雑談場はマジバだ。部活でこってり絞られた後、マジバで更に熱とカロリーを消費する。
今日は桃井も含めての語り会なので白熱しそうだ。と、思っていたのだが、やけにニヤニヤする赤司と桃井に黒子は訝しげに見やる。


「…なんですか」
「んーん、なんでもないよぅ」
「気にするな」
「気になるんですよ。何か美味しい事が合ってんですか?」


黒子の言葉にふたりは同時に頷き、更に笑みを濃くした。
桃井は身を乗り上げ、黒子の顔をじぃっと見つめるとそれでどうなのと聞くが、黒子は何の事だと眉を寄せる。


「きーちゃんの事!どう思ってるのかなぁって」
「天使です」
「うんうん、天使なのはわかってるんだけどね?それで?」
「…それで?それ以外に、ですか?…ワンコで、可愛くて、ぶっちゃけ見ていて愛おしく感じますよね」


ずぞぞっ、と音を立ててシェイクを吸い込むと一度息を吐きだし、ふたりを見て言った。


「はっきり言って、彼はボクのジャスティスです」


ガタガタッ、後ろから何か慌てるような音が聞こえた。何だと振り向けば顔を真っ赤にした黄瀬がいて、黒子はさっ、と顔を真っ青にする。もしかしなくても、黄瀬の反応を見ればわかる。先ほどのを聞かれたんだ。
黒子の後ろに居たと言う事は、目の前に座っていた桃井と赤司は気づいていただろうに、黄瀬が居るとこを言わなかったのは確信犯だ。
悔しげに唇を噛んでふたりを見ればニヤついているのは明らかで、黒子は逃げるが勝ち、と鞄を引っ付かんで立ち上がると、鞄の紐を引っ張られてしまい前に進めない。
何だと見れば黄瀬が掴んでおり、離してくれと紐を引っ張るが強く掴まれている為びくともしない。力のない自分に落ち込み、同じ男なのにこうまで力の差があるのかと溜め息を吐きたくなる。
黒子は離してくれと言う為に黄瀬の顔を見れば、黒子を真っ直ぐ見つめてくる真剣な顔がそこにあり、黒子は思わずたじろぎ、胸を鳴らした。
その胸の高鳴りが黄瀬への萌えなのか何なのかは分からないが、妙に恥ずかしくなり顔を背ける。


「…ねぇ、黒子っち、今の、ホント?」
「……何の事ですかね」
「俺の事愛しい、て…俺の事好きって事だよね?そうっスよね?」
「よくわからないです」
「黒子っち、俺の目を見て」
「すみませんが今日は用事があるんで手を離してくれませんか」


黒子に答える様に紐から手を離したが、今度は腕をつかまれてしまう。
ギョッとして黄瀬を見ればそのまま腕を強く引き寄せられ、黄瀬の胸の中へ飛び込めば顔を強く打ち鼻を痛める。


「いっ、痛い、ですっ」
「黒子っち、ねぇ俺の事好きなんスよね?愛しいんスよね?」
「何か少し勘違いしているみたいです」
「どう勘違いするんスか?勘違いのしようもないっスよ」


腕の力が強くなり、より一層黄瀬に顔を近づける事になり、黒子は仄かに香る汗の匂いと、黄瀬がいつも付けている香水の香りが混ざり合い黒子の鼻をくすぐる。
いい匂いだ、と現実逃避を始め出した黒子は自分とは違い、しっかりとした厚い胸板に何となく安心をする。そうか、背の小さい人はいつもこんな思いをして抱きついていたのか。そこまで思って眉を寄せる。黄瀬に抱きつくのは自分ではない。赤司だろう!


「黄瀬君」
「はい?」
「君の事が確かに愛おしいと思っています。可愛いです」
「く、黒子っち…!」
「けど、勘違いしないでください。あくまで、君が受けに回っている時です」
「………うけ?」
「君が赤司君や青峰君、緑間君や紫原君。そうですね、灰崎君も美味しいですね。彼等と一緒に居る君が美味しいんです」
「…え、と、よくわからな…」
「君は受けです。天使です。が、ボクと絡む必要はないんです」


お分かりいただけましたか?
顔を上げて黄瀬を見るが、黄瀬はきょとんとして小首を傾げたまま停止している。ついでに腕の力も緩くなっていたので、黒子は今の内だと黄瀬の腕の中から抜け出し早々にマジバを出ていく。
残された黄瀬は未だに黒子の言っていた意味が分からなくハテナを飛ばしまくっていれば赤司が声をかける。
見れば赤司と桃井がにっこりと笑いながら前に座る事を勧め、さて、と笑顔を崩さぬまま今からお勉強といこうか、と鼻を押さえた。









(さて、受けとは)(え、あの、ふたりは…)(きーちゃん、まずは黙って話を聞こうね)(黒子の事が好きなんだろう?)(……うぃす…)

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