腐った黒子と恋する黄瀬くん

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「やあ、黒子」
「ああ、おはようございます、赤司君。朝からいい笑顔ですね」
「ああ、いい事があってね」
「いい事?好きな絵師さんに何か描いて貰ったんですか?」
「まあ、近いような事かな。オレにとってとてもいいことだ」
「そうですか」


随分と生き生きとしている赤司に対して、黒子は鬱々としていた。
とても美味しいエサ(ネタ)がやってきたというのに、思うように筆が進まなかったのだ。いつもなら思うがままに書いて行けると言うのに、ネタはあるがそのネタを上手く使えなかったため、昨晩の黒子は書くのを止めて眠りに付いた。
朝起きてからは、美味しいネタを上手く発散出来なかったからか、あまりすっきりとした目覚めではなく、布団に丸まって一日寝ていたい気分だった。
しかし、母がそうさせてくれなかったので、仕方がなく学校へ来たのだが、きらきらとした笑みを向けてくる赤司を見て家に引き返したくなる。


「黒子、美味しいネタがあったらすぐオレに言うんだよ?」
「…はあ、そんなネタがあればいいですね」


実際にはあった。昨日、放課後の学校で、赤司的にはとても美味しい出来事が。
だが、それを報告しないのは黒子のプライドと意地だ。
しかし、黒子は知らない。黄瀬が黒子の事を好きな事を既に知っている事を、黄瀬が黒子に告白させるように仕向けたのは赤司だという事を。
赤司は深く溜め息を吐く黒子を見てほくそ笑むと、心の中でいい感じだと呟く。
黒子は普段、余り他人に関心を向けない。まあ、好きなバスケや趣味だと話しは別になるが、それでも他人の生活にまでは足を踏み入れようとはしないし、黒子自身も干渉しない。だが、普段、影が薄いので人に絡まれる事はおろか、人に好意を向けられる事がない黒子は(部活のマネージャーひとりからは熱烈的な愛情を向けられているのだが、黒子は関心がないらしい)、初めてはっきりとした“愛”と“恋”を向けられたので何も感じない事はないだろう。
その事を見通していた赤司は、黄瀬を黒子に告白させるように仕向け、黒子が少しでも黄瀬に意識を向けるようにさせた。
そんな事つゆ知らぬ黒子は、赤司にだけは黄瀬が自分の事を好いている等の美味しいネタを知られないように必死だ。


「黒子は初恋は誰だった?」
「突然ですね。ボクの初恋ですか…CCさくらの雪人さんです。彼のあの甘い頬笑みと、天然なホモにやられました。ホモイホイな彼にボクもホイホイされましたね。そういう君は?」
「オレかい?オレは雨柳堂夢咄の蓮だね。と、いうか、波津彬子さんの作品に魅せられたな」
「あー、あの人の作品素敵ですよね。あれにハマっていた頃はヤケに物を大事にして九十九神が現れないかわくわくしていました」
「無駄に骨董屋に行ってみたりしてな」
「それでそれっぽい物があると干渉に浸ってみて、店を出るときに後ろ髪引かれる思いをしてみたり」
「家に帰ってそれが着いてきてないかそわそわしたり」
「いい思い出だな」
「痛い思い出とも言います」
「黒歴史か…誰もが通るさ」


ふたりが遠い所へ目をやりながら学校へ向かっていれば、前方に落ち込んだ様子でのろのろ歩く金色の頭が見えた。それにいち早く気付いた赤司は、未だ遠くを見る黒子を見て口元に笑みを浮かべ、用事があるから先に行くぞと一歩前へ出ることで黒子の意識を戻す。そのまま先へ行けば嫌でも黄瀬が目に入るだろう。
今はふたりが何かしらのアクションをしなくてもいい。黒子が黄瀬に対して意識してくれれば万々歳だ。まあ、アクションがあればあったでこちらとしては好都合である。
赤司は後ろで聞こえた、黒子が黄瀬に挨拶をする声を聞いてほくそ笑んだ。今日もオレの天使は可愛い。


「え、あ、え?!くっ、くろっ」
「そんなにとろとろ歩いていると遅刻しますよ」
「あっ、黒子、っち…オレ、」
「何ですか?」


昨日の今日だ。何かしらのリアクションがあってもいいだろうに、黒子はいつも通りで、昨日、自分が告白をしたのが夢のようだ。
そもそも話しかけられるとは思わなかったし、避けられる覚悟で、さらには嫌われているかもしれないと鬱々していたのにこれでは拍子抜けだ。
しかし、これは少しでも期待していいって事だろうか。それとも、何ともない位に黒子にとって黄瀬とはどうでもいい存在なのだろうか。
黄瀬は何を考えているかわからない黒子にヤキモキしながら黒子を見る。

 
「(ああ、こんな捨てられた犬のような…くそっ、あざとい、あざとすぎるぞこのワンコ…!あれですか、赤司君が冷たくさっていったから寂しいんですか。でもふたりきりになるとさぞかしお熱いんでしょう?!昨日の熱を忘れられないって?!リア充め!ああ!もう!可愛い!)」


黄瀬は黒子の脳内等知らなくていい話だ。





(黒子っち…オレどうしたらいいの?)(誰かこのワンコをぶち犯してください!!!!)

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