腐った黒子と恋する黄瀬くん

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部活でのプレースタイルは天と地の差があり、考え方も余り似ていない。それこそ部活外ではあまり話さないし、お互いの私生活に触れるようなことはしないし、触れようともしない。
――だが、最近知った事だがふたり共通の趣味がある。


「そういえば赤司君、昨日blogに上げてた線画何ですけど、あれに色塗りたいです」
「ああ、いいよ。コピーしてくるかい?」
「いえ、自分でするのでデータだけほしいです」
「わかったよ」


ふたりは、とあるイラスト投稿の大きなサイトで元々知り合ってはいたが顔は知らなく、まさか同じ部活の仲間だとは思いもしていなく、黒子主催にて開いたオフ会で顔を合わせた時には普段滅多に声を上げないふたりが驚きで悲鳴を上げた。
しかし、趣味は一緒なので意気投合し、今はよき仲間として趣味を分かち合っており、部活が終わればこうしてマジバやSkype等で話をして夜が更けるのは稀である。


「新しい絵の具を買ったので試してみたかったんです」
「ああ、言ってた紺色のやつかい?」
「そうです!ボク好みの果てしなく黒に近い紺なんですが、僅かに緑がかっているのが最高なんです」


鼻息荒く言えば楽しみだねと笑みを浮かべて貰えたので、黒子も嬉しそうに笑う。
今まで、黒子の周りの身近な人に自分のこだわりを伝えても、苦笑かハテナを浮かべられて話を反らされてしまう。
なので、赤司が同士であると知るまでネットでしか想いを吐き出す術が無かったのだが、今では赤司に話せるし、更に共感や意見交換等も出来る。


「しかし、赤司君が描くツナ獄は素敵ですね。塗らせてもらいながら舐め回すように見てます」
「ツナ獄好きって中々居ないから自給自足で辛いけど、黒子が喜んでくれて嬉しいよ」
「獄ツナも嫌いではないですが、やはりここはツナ獄ですよ。力では勝てないけど、精神的に押さえ付けて獄寺君を組みしだく綱吉君に大変萌えます…!」


拳を握り締めて熱を上げながら言う黒子は、だからもっと描いてくださいねと赤司を見る。
赤司は、黒子と仲良くなるまで来たことも、勿論飲んだこともなかったマジバのシェイクを飲むのを止め、ネタ提供はしてねと言った。

赤司は絵も文章能力も特化している。絵はデジタルで描いており、出した新刊は漫画、小説、共にすぐに完売するぐらいには人気だ。
対して、黒子は色を塗ることを得意としている。ただ、パソコン作業が苦手なのでアナログで、更に水彩で色を塗っているのだが、それが逆に受けており、着色の依頼がよく来る。
普段、黒子自身は絵を描くことはしていないので、赤司が描いた絵に着色をさせてもらっている。


「ねぇ、黒子の為にツナ獄を描いてやるから黄黒、描いてもいいかな」


黒子は自分のシェイクへと伸びていた手が止まった。
いきなり何を言いだすと思えば、と溜め息を吐いて据わった目で赤司を見ると、まるで馬鹿な事を言うなとばかりに、大袈裟な程肩を落として口を開く。


「いいですか、赤司君。黄瀬君はね、赤司君に恋しているんです」
「どうしてそうなった」
「周知です」
「馬鹿な事を言ってもらっては困るな」
「その言葉、そのまま赤司君にお返しします」


趣味でふたりの気が合わないところはここだ。黄瀬涼太。彼の想い人は誰だ、という話である。
黄瀬涼太も、黒子も、赤司も男だというのは事はわかっているが、男同士の恋愛等に偏見はない、寧ろ推奨をしているのは黒子と赤司が“腐男子”というものだからだ。
同じチームメイトのふたりを勝手にくっつけて楽しんでいる辺り、かなりの重症とみた。
黒子は再びシェイクへ手を伸ばしストローへ口を付けると、少し溶けていたバニラシェイクがストローを通して口へ入りこんでくる。
ああ、やはりバニラシェイクは最高だ、そう舌鼓を打つと机に広げていた紙を鞄へ詰め込み、椅子から立ち上がる。


「では、ボクは帰ってする事があるのでこれで」
「ああ、帰ったらSkypeに行くよ」







(ふたりは似ていないようで似ている)
 

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