しょーとどりーむ

□証(あかし)
2ページ/5ページ

陽波 side



私 、生きてないのに、佐江の心配ばっかりしちゃって、この世に残ってる。


だって、 私 が死んじゃってから、なんか、後ろばっかり見て、前に進んでくれない。

忘れられちゃ困るけど、覚えられすぎてても困る。

ちゃんと前を向いてほしい。

振り返ってばっかじゃ、かえって前に進めないし。

もう、佐江には 私の姿は見えないけど、心の中では、手を少し、ほんの少しだけ振ってくれている。

でも、やっとの思いで振っているのは分かる。

手を振ってくれてるときの顔が、見ていられないほど辛そうで、今にも大声を出して泣いちゃいそうな顔をしているから。


「じゃあね」って、声にしたら、「やっぱり行かないでっ」って言っちゃいそう。って、心で言ってる。

そんな心の中に見えてくるのは、
「佐江は佐江の夢に向かう。 陽波は 陽波の世界に行く。 」
という文。

私のことを思い出して、辛くなったら、この言葉を呟いてるよね。佐江って。


私 は、生まれ変わるまで、記憶がなくなることはないけど、佐江は、なくすことが出来れば、思い出すことも出来るし、新しい記憶を増やしていくことだって出来る。

佐江のこと、何度生まれ変わっても、 私は、忘れないから。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ