しょーとどりーむ
□証(あかし)
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陽波 side
私 、生きてないのに、佐江の心配ばっかりしちゃって、この世に残ってる。
だって、 私 が死んじゃってから、なんか、後ろばっかり見て、前に進んでくれない。
忘れられちゃ困るけど、覚えられすぎてても困る。
ちゃんと前を向いてほしい。
振り返ってばっかじゃ、かえって前に進めないし。
もう、佐江には 私の姿は見えないけど、心の中では、手を少し、ほんの少しだけ振ってくれている。
でも、やっとの思いで振っているのは分かる。
手を振ってくれてるときの顔が、見ていられないほど辛そうで、今にも大声を出して泣いちゃいそうな顔をしているから。
「じゃあね」って、声にしたら、「やっぱり行かないでっ」って言っちゃいそう。って、心で言ってる。
そんな心の中に見えてくるのは、
「佐江は佐江の夢に向かう。 陽波は 陽波の世界に行く。 」
という文。
私のことを思い出して、辛くなったら、この言葉を呟いてるよね。佐江って。
私 は、生まれ変わるまで、記憶がなくなることはないけど、佐江は、なくすことが出来れば、思い出すことも出来るし、新しい記憶を増やしていくことだって出来る。
佐江のこと、何度生まれ変わっても、 私は、忘れないから。