long story parallel

□続 歌うたい番外編
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続 歌うたい番外編


onew side



目が覚めて、見慣れない天井に、一瞬まだ夢の中なのかと考えてみるけど。


そういえば昨日は泊まったんだった。

隣で、もそりと毛布の塊が動いたのを感じて思い出す。


乾いてぱりぱりしたものがまだ内腿に残っているけれど、不快でもなく快でもなく。

朝が来てしまえばシャワーで流して終いだ。




この人との出会いも特に何てことない。



たまに顔を出していたクラブで飲んでいたら、『なんでそんなに悲しそうな顔をしてるの?』って話しかけられたんだ。


そのまま一緒に飲みに行ってそのまま抱かれてから、たまにこうやって呼びつけられるから会いに来るだけ。


呼ばれるのは、大抵女が捕まらなかった日だ。


夜を共にした後に、男は初めてだったけど悪くないね。また抱かせてよ。と無遠慮に言われた。


知ってるけど、求めてくれることが嬉しくてそれがたとえ幻でもよかったんだ。


肉体同士のぶつかり合いは嫌いじゃない。





重い足取りで家に着いたのは、夕方だった。





「おかえり、遅かったね。」


どこに行ってたの。ずっと待ってたよ。とアパートの俺の部屋の前で、ドアにもたれかかっている人が言う。



あれは、ずるい人だ。僕が好きな。


「今日は出張だって言ってきたんだ。」


当然のように、だからいいだろと言わんばかりで、胸がキュと縮まる。


そのひとことだけで僕に悟らせるんだから。



帰ってと言えないこと、無視できないことわかっているんだ。



僕は平気なふりをする。


「入れば。」ってわざと冷たく言わなきゃならないんだから。


思わず語尾が嬉しそうに上がらないようにしなきゃいないんだから。




ん〜じんぎの匂いがする。とかなんとか言いながら、当たり前のように靴を脱いで、当たり前のように座り心地のいいソファーに座って、当たり前のように部屋に置いてある煙草に火を点けている。



すべて僕が、彼が過ごしやすいように用意していることも知っているんだろう。



コーヒーを淹れて彼の前に差し出した時、スンと首すじを嗅がれて「また違う男か」と言われた。



自分が香らせているのは乳の甘い匂いなのに。



狡くてひどい人だ。





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