コバナシ

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manicure


4月のイベント


どれがお好み?
「4月のイベント」の続き。

ババヌキ


待ち合わせ


市にて
ちよは何をするでもなく、ぼーっと往来を眺めていた。
市に来たのだが、ここで待つよう言われて彼の戻りを待っているのだ。

(あ、あの髪飾りちょっと可愛い。)

すぐ前の店先に並ぶ髪飾りが目に入ったけれど、うっかり動いて行き違いになっても困るので遠目に眺めるだけにする。

と、
髪飾りを遮るような位置に男が立ち塞がり見えなくなってしまう。

(あ、あれ買うのかな?)

そのまま動向を伺っていると、男は視線に気づいたのかこちらを向き、そのまままっすぐと向かってくる。

(え、何...)

「そんなに熱い視線を送られたら、来ないわけにはいかないだろう?」

多分自分を見ていたと勘違いしているようだ。
髪飾りを見ていただけなのに。

「あなたでなく、髪飾りを見ていたんです。勘違いさせてしまったようで申し訳ありません。」

目線を合わせないよううつむきがちにそう言うと、男は笑った。

「面白いな。」

(私は面白くありません!)

心の中で呟きながらどうやってこの状況から逃れようか考えを巡らせる。
す、と男が手を伸ばし、腕を掴まれた。

「離して下さい。」

男の手を振りほどこうと身をよじったが男は手を離してくれない。

(ああもう、どうしよう…)

途方に暮れかけた時、フッと男の手が緩んだ。

「っ!」

後ろから伸びてきた手に男の手がねじり上げられている。
振り向くとそこには待ち焦がれた彼が怒りを漂わせて立っていた。
何も言わずにもう片方の手でちよを抱き寄せる。

「失礼した。」

男は逃げるようにその場を去って行った。

「あ、ありがとうございます。」

溜息をひとつついて、彼はちよの頭をなでた。
大きな暖かい手。

「帰りますか?」

ちよが見上げると彼は優しく微笑み、並んでゆっくりと歩きだした。

たなばた




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