オハナシ 1
□クルクル
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「家盛さん、コーヒー入ってますよ。」
「いーえーもーりーさーん」
こちらに来てちよの部屋で暮らすようになり、
すっかりテレビにハマってしまったようで
家盛はまた朝の情報番組に見入ってしまっている。
(ああなると長いんだよなぁ。なんかコドモみたい。)
テレビに向かう家盛の後ろ頭を見ながら
コーヒーを飲む。
しばらく動かなそうなのでちよは
先に身支度を済ませてしまおうと
私室へ向かった。
メイクや着替えを済ませてリビングへ戻ると
まだテレビを見ている家盛に声をかけた。
「コーヒー冷めちゃいましたね。温めなおしますね。」
「ああ、すまない。またつい見入ってしまった。」
家盛はちよの声に慌てて立ち上がり、キッチンへと向かった。
「すぐできますから、座っててください。」
レンジへコーヒーカップを入れてボタンを押す。
「・・・。」
「物を温めることができるんですよ。」
レンジの中でくるくる回るカップをじっと見つめる家盛にちよは簡単に説明をした。
「回っているだけのように見えるが・・・。温まるのか。物が。」
「そうですよ。」
説明してあげたいところだが詳しい原理はちよもよく分からないし、他の時代から来た家盛に説明するのもよくないのかとそれだけ答えた。
「回ってるな。」
「そうですね。回ってますね。」
回るコーヒーカップを二人でしばし眺める。
ピー
電子音が鳴り、ちよはドアを開けカップを取り出し、
家盛に手渡した。
「温かい。すごいな。」
なんだかほのぼのした気分になって
そして、あることを思いついた。
温まらないけれど回るカップ。
それに二人で乗れたら楽しいだろうか。
回転をあげたら家盛さんはどんな反応をするんだろう。
そんなことを考えながらまた、
コーヒーを一口飲んだ。
そんな朝。