オハナシ 2

□ちょうちょ
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「きよもりさーん?」

パタパタという足音と声が近づいてくる。

(ちよだな。また何か大掃除でも始めるのか?)

清盛はそんな事を考えつつも目を閉じたまま傍らに寝そべっているまろに手を伸ばした。

「あ、いたいた。やっぱりお昼寝してましたね。」

「ちよか。なんか用か?」

「家盛さんと甘味作ったんです。召し上がりませんか?」

「へー。」

ゴロリとちよの方へ転がり、清盛は軽く伸びをした。

「仕方ねー。起きるかー。」

肘をつき、半身起き上がると清盛は空を見上げた。

「もうすぐ暑くなるな。」

「そうですね。そこじゃあ暑くてお昼寝できなくなりますね。」

「したら部屋で寝るだけだろ。」

「結局寝るんですね…」

「まーな。あ。」

「え?」

笑いながらちよを見上げた清盛の目線が頭の上で止まった。
ちよが頭を上げようとすると手で制された。

「な、なんですか?」

「蝶。がお前の頭に止まってる。」

「え…」

目線だけで上を見ようとしてみるも、頭の上にいるらしき蝶は見えない。

「おもしれー。なんかマヌケ。」

「清盛さんひどい。ちょうちょ見えない…」

ちよが僅かに身じろぎすると、蝶はひらひらと頭から離れて飛びだした。

「わぁ。かわいい。」

2人は空へ舞う蝶を見送る。

「あ!清盛さん!今度帯をちょうちょみたいに結ってくれませんか?」

「あぁー?」

「こういう風に。」

ちよは廊下に指でリボンの形を描いた。
それを覗きこんで見た清盛は頷いて、そしてようやく起き上がった。

「立って後ろ向け。」

「え?!今ここで?」

「今じゃねーとやらねーぞ。」

「はい!」

ちよは慌てて立ち上がり、後ろを向いた。
シュル、と帯か緩みまたすぐ締め直されていく。
襟元が緩まないよう、手で押さえて少し俯いて帯が出来上がるのを待つ。

「よし。いいぞ。」

「ありがとうございます!」

後ろに手をやり、帯を触ってみてちよは首を傾げた。

「あの…清盛さん、これ…」

「蝶はやめた。」

「なんで…?」

あからさまに残念そうな顔をしたちよに苦笑して、清盛はその頬を軽くつまんだ。

「次から次にほかの花に寄り道されちゃ、たまんねぇからな。」

「え…」

「だから花にした。」

「ただし、止まれんのは俺だけな。」

腰を屈めるようにして、顔を寄せるとちよのつままれた頬が赤く染まった。

「わかったか?」

「…はい。」

よくできました、というように頬から手を離しポンポンと頭を叩くと
清盛はちよの手を取り歩きだした。

「ところで、食えるもん作ったんだろうな?」

「も、もちろんです!ちゃんと味見もしましたよ!」

「へー。そりゃ楽しみだ。」

蝶は2人の去った庭にヒラヒラと飛び回っていた。

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