東方死滅郷〜乱〜
□クロス作品 虚:前編
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〜〜西の山 森〜〜
?「はい……あ、そうなんですか…はい……なるほど……」
一人の少年が、木にもたれかかり、俯き、何やら独り言をつぶやいていた。
見かけの歳は10歳程。
髪はボサボサに逆立ち、前髪が目にかかる程長く、色は黒。
目は、顔を俯かせているため前髪で見づらいが、クマが濃い。
服は、黒に、薄緑色に光るヒビのようなラインの入った、丈が膝下まであるコートに、同じ色の長ズボン、靴はローファー。
背中からはこうもりの翼が生えていた。
黒い骨組みに、外側の色は黒、内側は薄緑色の皮。
彼の横の地面には、服と同じカラーリングの巨大な鎌が刺さっている。
鎌の地面に刺さった刃の部分には、やさしく包み込むように、地面から伸びた小さな花が、少し巻き付いていた。
?「……そうですね…でもそれは……」
少年のしゃべり方は、どこか、疲れてしまっている様な雰囲気を放っていた。
そうやって少年が独り言を喋っていた時、それは起こった。
……クパァ…
何かが開く音。
そして、空が青い空ではなく、何やら気味の悪い、“大量に目がある模様”に変わった気がした。
?「!」
少年は少し驚いた様子で上を仰ぎ見るために顔を上げた。
少年の目は、力があるようで、少し疲れている様な目つきに、緑色の瞳を持っていた。
?「………」
しかし、少年が驚いて瞬きした頃には、空は元に戻っていた。
?「…気のせいか……」
少年は無表情のまま頭を掻く。
?「……?」
もたれかかっていた木に振り向き、少年は首を傾げた。
?「え……どうしたんです?『誰だ?』ってさっきまで……………」
一瞬言葉だけ戸惑う少年。
だがすぐに黙り込み、考え込む素振りを見せる。
考え込んだ表情のまま立ち上がる。
そして一言、こう言う。
?「……邪気…」
そう言った少年の顔は、無表情のままだったが、必死に何かを堪えている様だった。
とても切なそうで寂しそうな、そんな感情を堪えている様だった。
無表情で、だけれどどこか泣いているかのような雰囲気の声で、少年はつぶやく。
?「…………行かなきゃ……」
−−虚−−