短編〜妖精
□それでもあなたと
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「ゲホッゲホッ…あー…頭イテェ…」
普段はいやにテンションの高いこの男、ビックスローは、本日は珍しく熱をだしダウンしていた。
「珍しいねー、ビックスローが風邪ひくなんて」
「バカ、俺は風邪なんか、っゲホッゲホッ」
「ばっちり風邪じゃない。何言ってんの」
「ウルセー…」
馬鹿は風邪ひかないっていうけど、あれ本当は馬鹿は風邪ひいても無駄に強がるって意味なのかもね、と笑ってビックスローの額に手をおくユリア。
「すごい熱…まあ昨日あれだけはしゃいでたら当然ね」
「…」
やれやれ、とでも言いたげに大袈裟にため息をひとつ。
そのユリアの態度に文句でもありそうに睨んでみるが、赤い顔に潤んだ瞳では効果がなかった。
「何よ。看病してほしくて呼んだんじゃないの?ここに水と薬だけ置いて帰ってもいいのよ?」
「…ワリィ、頼む…」
「はいはい。病人は大人しくしてなさい」
そう言ってビックスローの毛布をかけ直し、額にキスを落とした。
おかゆ作ってくるから、ちゃんと寝てるのよ。
そう言い残し、ごく自然な流れで、そのまま出て行ったユリア。
残ったのは、呆然と扉の方を見つめるビックスロー。
「あいつ、いま何した…?」
レアな恋人のその行為に、たまには風邪ひくのも悪くないな、なんてぼんやり思っていた。
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