短編〜海賊
□夜空の祝福
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彼は実は手品師でなく、魔法使いなのではないだろうか。
真剣にそう思ってしまうほど、彼―手品師『LAW』のマジックは美しく、魔力のような魅力をもって観る者を圧倒した。
広い舞台の真ん中に立ち、黒を貴重としたシンプルな衣装に身を包み、今日も観客を虜にする。
私はそれを客席から眺めるのだけれど、まわりの女の子達の目はやっぱりただマジックショーを観るそれとは違う。
恍惚、とでもいうべきその表情。彼の声に、滑らかで華麗な指さばきに、一挙手一投足に、全てのマジックに、魅了されていた。
そんな彼女たちを見る度、少しだけ申し訳なく思って、でもすぐに、そんな彼は私のなんだと嬉しくなる。
だから今日も、笑顔で拍手をおくる。
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