短編〜海賊

□きみをみてる
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授業の合間の休み時間。教室はざわめき、思い思いに過ごしていた。

そんな中クレアは席についたまま、次の授業の開始を今か今かと待っていた。なぜなら―

始業ベルが鳴り、同時に授業担当の教員が入ってきた。

「席について下さい。授業始めますよ」

柔らかくけれど凛とした声で着席を促すのは、国語のペル先生。このペル先生が、クレアの想い人だからだ。

生徒は各々の席へ散り、授業が始まる。

「今日から新しい単元に入ります。教科書45ページを開いて下さい」

教科書を開かせると、ペル先生は本文を読み始めた。新しい単元に入るとき、ペル先生は決まって本文を自ら読む。

クレアはペル先生に会える国語の授業は大好きだが、特にこの、新しい単元最初の授業が好きだった。

本文を読み聞かせるペル先生の声は温かく優しく、聞いていると安心できた。

好きな人の声でどきどきするのだけれど、どきどきと安心が心に同居していて、なんだかくすぐったかった。



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