難儀なことだ

□難儀なことだ6
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同級生達に連れていかれたのは、人気がない校舎の隅。自分を取り囲んで睨む同級生達を、雅時は冷然とした視線で見る。

「何用だ。早よう済ませよ。」

平然とした態度が気に障ったのか、一人が舌打ちし、怒鳴り声を上げた。

「お前、天女様に優しくして頂いたからって調子に乗るなよ!」

雅時は心底呆れたように溜め息をついた。怒鳴った同級生の怒声を避けるように蝙蝠扇を開き、目を瞑る。

「…やはりその話か。生憎、私は天女様をそこまで慕っておらぬ。もう自ら近付こうとは思わぬ。」

「んな話信じるわけねぇだろ!公衆の面前で天女様を口説きやがって!」

雅時の胸ぐらを掴み上げ、必死の形相で怒鳴る同級生。その同級生の行動を、別の同級生が止めに入った。

「止めとけって。達者な物言いで女を惑わすしかできねぇ奴なんだから。」

その言葉には、明らかに雅時に対する侮蔑が込められていた。止められた同級生は一瞬驚いた顔をしたものの、すぐ嘲笑を浮かべた。

「それもそうだな。こいつ、そういう奴だもんな。」

一人が同意したことにより、全員が同調したらしく、嘲笑を浮かべて頷く。

黙って聞いていた雅時は目を開き、蝙蝠扇を閉じた。そして自分の胸ぐらを掴み上げている同級生の手を閉じた蝙蝠扇で落とす。蝙蝠扇で手を叩いた音が響いた。

「ッ…いってぇ…。何すんだよ!」

一瞬の沈黙の末、抗議の声を上げる同級生。雅時はその同級生を睨み付けた。

「そなたは黙るがよい。」

特に大きな声ではない。だが、よく通るその声は手を叩き落とされた同級生を硬直させるには十分だった。
声には、明らかな怒気が含まれている。
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