放っておいてくれ
□放っておいてくれ9
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今はちょうど食事時だったらしい。人がたくさんいた。いつもは時間をずらしているので、人がたくさんいる食堂は久しぶりだ。
…相変わらず、視線をぎすぎすと感じる。鬱陶しいぞ、こいつら。
そんな中、俺は立花にひかれて注文待ちの列に並ぶ。そんな俺を確認したらしい数名が俺に駆け寄る。
「雅斉!」
…やっぱり来るんじゃなかった…。
盛大に後悔し始めた俺である。めんどくせー。
無視することはできず、そちらを見る。俺に駆け寄ってきたのは、潮江、善法寺、吊り目野郎(留三郎)、なんか無駄に元気な奴(小平太)、暗い奴(長次)だ。
「あ?」
…すっごい面倒くさそうだな、俺。でも、事実面倒なのだから仕方がないじゃないか!
半ばやけになってた俺である。きっとこれは夢だ。一度寝れば、元の状態に戻っているはず。
だから、今は適当に受け流しておけばいいだろう。
俺の心のうちなどまるで考慮していないらしい無駄に元気な奴が、俺の腕をつかんだ。
「雅斉、一緒にバレーしてくれる気になったのか!?」
…こいつ、俺が怪我してるの知ってるだろ。ふざけんな。
「元気になったみたいで、よかった…。」
…お前は男ならもっと声張れや。何言ってるのかよく分からん。
「なぁ、元気になったのなら俺と一緒に鍛錬しないか?」
…そんなすぐに怪我が治るわけねぇだろ。てか、今鍛錬しに行ったら俺は間違いなく新野先生に殺される。もしかして、婉曲的な殺人予告か?
「ちょっと留三郎!雅斉はまだ鍛錬できるほどよくなってないんだよ!悪化したらどうするのさ!」
「伊作の言うとおりだ。少しは雅斉のことを考えろ。」
…いいこと言うな、善法寺、立花。てか、吊り目野郎の名前は留三郎なのか。なんか発見したぞ、俺は。
「はっ、馬鹿だな留三郎。そんなすぐに怪我が治るわけないだろう。お前、変な鍛錬して頭まで筋肉になったんじゃねぇか?」
…いいこと言うな、潮江。俺が言いたいことの大半を言ってくれた。
「なんだと文次郎!勝負しやがれ!」
…このくらいで喧嘩売るとか、こいつ頭大丈夫か。
「望むところだ!今日こそ決着つけてやる!」
…乗るのかよ、潮江も。お前ら絶対仲良いだろ。
…てか、別に俺いなくても会話成り立つじゃねぇか。受け流すまでもなかったな。
俺はなんか騒いでいる六人を放置し、俺は注文しに向かう。俺の番が回ってきていたのだ。
おばちゃんは俺を見ると、目を潤ませた。
「雅斉君、よかった、元気になったのねぇ。」
…この人にはたくさんお世話になった。だから、邪険にはできない。
「おう。完全に治るまではまだ時間がかかるだろうが、もういろいろ問題ねぇぞ。」
…俺ののからだの問題は減ったが、生活環境の問題はあり得ないくらい増えたがな。
そう言いかけて、慌てて留めた。おばちゃんにあまり心配はかけられないのだ。
「あんまり無理しちゃだめよ。」
「分かってるって。」
多分、今の俺は笑顔だろう。この学園にいて笑顔になれるのは、気持ちよく寝た時とおばちゃんと話した時くらいだ。
ちなみに、おばちゃんは大福をおまけにくれた。やっぱりおばちゃんは偉大な大人物である。
先ほど騒いでいた六人を見れば、まだ騒いでいた。時折俺の名前が聞こえる。が、無視した。
あれはあれで仲良くやっているのだ。そこに突入するほど俺は野暮ではないのだ。そして何より、できるだけ関わりたくないというのが本音だ。
彼らの態度を見る限り、今までのことを本当に反省したのだろう。だが、今さら信用できると聞かれれば嘘になる。それにこいつらは俺のことを覚えているらしいが、俺はこいつらをほとんど覚えていないのだ。
…今更どうしろっていうんだよちくしょー!
これが本音である。俺は嫌われた状態で何も困らなかったし、それでうまくやっていたのだ。それでこいつらは仲良くやっていた。それでいいじゃないか。