難儀なことだ

□難儀なことだ19
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葵音が消えて二週間がたった。忍術学園は普段通りに戻り、葵音のことを話題に出す者もいない。
すべての生活がもとに戻ったが、雅時は以前より後輩と接する機会が増えた。
葵音が消えると、葵音の取り巻きで雅時に悪態をついた者から一斉に謝罪を受けた。
雅時としては葵音の件に関して楽しんでいた部分もあり、そのために取り巻き達を利用していたことにもなる。その負い目と面倒だと思っていたこともあり、笑って許した。
すると、心が広い人間と捉えられ同学年からは以前よりも仲良くなり、五年生と四年生からは慕われるようになった。
親しい先輩が葵音の取り巻きとなってしまった下級生からは、たくさん礼を言われた。
威厳があって話しにくい、と下級生からは敬遠されていたが、それを機にそうでもないと思ったらしく今ではたくさんの下級生から声をかけられる。
概ね良いことばかりだが、面倒も増えた。
ある日、雅時が自室で琵琶を弾いていた時だ。
葵音がいた時はそれどころではなかったため、ひどく久しぶりに感じた。
が、自分の部屋に五年生が乗り込んできた。

「雅時先輩!」

先頭は鉢屋だ。鉢屋も以前はあまり親しくなかったが、葵音の件を機に雅時を慕うようになった。
鉢屋に続き、竹谷、兵助、雷蔵、尾浜も騒々しく入ってくる。
雅時はそんな五年生を見て眉をひそめた。

「何用だ、騒々しい。」

「はい、雅時先輩にお願いがあります!」

鉢屋が元気よく言うと、竹谷、兵助の順にそれを制した。

「待てよ三郎!」

「俺達だって大分前から頼んでるんだぞ!」

言い争う二人を、尾浜と雷蔵がやんわりと止める。

「取り合えず、二人とも落ち着けって。」

「そうだよ、二人とも。雅時先輩に迷惑だよ。」

雅時にはさっぱり意味が分からない。琵琶を床に置いた。

「取り合えず、座るがよい。」

雅時の声を聞いて落ち着いたらしい五年生が座ると、鉢屋が嬉々とした様子で言った。

「学級委員長委員会に委員長として入ってください。」

雅時は数回目を瞬く。無意識に他の五年生の方を見ると、

「いや、それなら生物委員会に来てください!」

「火薬委員会に!」

と口々に言われた。端から聞いている尾浜と雷蔵も、

「そりゃあ俺としては学級委員長委員会に来てくださったらありがたいけど…。」

「やっぱり六年生の先輩がいると心強いよね。」

と呑気に話している。
生憎、自分は今さら委員会に入るつもりはない。
雅時はため息をついた。

「生憎、私はどの委員会にも所属する気はないぞ。が、手伝いくらいならいくらでも行く。」

「えー…。」

不満そうにする鉢屋。兵助と竹谷も、どこか不満そうにしている。
なんとか宥めようと雅時は考えた。
考えている最中、自室の扉が開いた。
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