難儀なことだ
□難儀なことだ7
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放課後、雅時は先程の授業の提出物を持って職員室に向かっていた。
途中、土井とすれ違った。
「お、雅時じゃないか。」
名を呼ばれ、雅時は立ち止まる。いつもの典雅な笑みを浮かべ、土井を見る。
「お久しぶりでございます、土井先生。」
「ああ。お前に頼みがあるんだが…。」
「何か?」
「今日、火薬委員会で火薬庫の掃除をするんだ。それで、お前に手伝ってもらえないかと思ってな。」
申し訳なさそうに頼む土井。雅時は笑みを浮かべて頷く。教師なのだから生徒に頼むくらいもう少し気軽になればいいのに、と思いながら。
「勿論、手伝わせて頂きましょう。」
快諾すると、土井が苦笑した。
「いつも悪いな。」
「いえ。私は委員会に所属しておらぬのです。ならば、他の委員会を少しでも手伝うのは当然のこと。これからも気軽にお声掛け下さい。」
雅時の言ったことは、思っていることの一部だった。
雅時がまだ下級生だった頃、委員会に所属していなかった雅時は何かと他の委員会の上級生に気にかけてもらっていた。
上級生としては、委員会に所属していないと上級生と関わることも少なく、他の生徒が学べることも学べないと思ったらしい。事実その通りだ。
だからたくさんの上級生からたくさんのことを学んだ。
自分が上級生となった今、自分が下級生の時に受けた恩を返したいと思っているのだ。面倒事は嫌いな雅時であるが、後輩の為になるのなら少しでも何かをしたいとも思っている。
土井に対して言わないのは、土井の態度からして雅時の想いが伝わっていると思ったからだ。
「…お前が委員長として火薬委員会に入ってくれればなぁ…。」
土井の発言に、雅時は苦笑した。雅時がよく手伝いに行くのは、六年生がいない生物委員会と火薬委員会だ。そのため、委員長代理の竹谷と久々知からはかなり慕われている。だから、よく言われる話だ。
「よく生物委員会からも言われます。」
「だよなぁ…。」
「とりあえず、この提出物を提出し終わったら伺います。」
「あぁ、頼む。」
「はい。では、後ほど。」