難儀なことだ
□難儀なことだ2
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医務室には、制服姿の伊作がいた。
夜更けに来た三人をいつも通りの笑顔で迎えた伊作だが、文次郎が抱えている女性を見て、まずは唖然とした。
「伊作?」
伊作の様子を疑問に思ったのか、文次郎は伊作の名前を呼ぶ。
が、伊作はそれには反応せず、眉をつり上げた。いつも穏やかな伊作らしくない、なんとも形容しがたい凄まじい形相だ。
そして、怒鳴り声を上げる。
「ちょ、三人ともその女の人どこで拐ってきたのさ!?」
どうやら、盛大に勘違いをしているらしい。
「んなわけあるか!」
文次郎が即座に怒鳴り返す。
その怒声に雅時と仙蔵は不快げに眉をひそめた。
「…伊作、文次郎、うるさいぞ。落ち着け。時間を考えろ」
「仙蔵の言う通りだ。大声で怒鳴りあうなど、優雅ではない。」
二人にたしなめられた伊作だが、まだ落ち着かないらしい。
「落ち着いていられるわけがないじゃないか!その女の人、どうしたんだよ!?」
伊作の様子に、雅時は落ち着かせるのを諦めた。
「分かった。その女性について説明しよう。とりあえず、座るがよい。話はそれからだ。」
取り敢えず女性は布団に寝かせ、四人は座った。