過去拍手

□夢主、入れ替わる。【前編】
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「難儀なことだ」「楔」の夢主の名前は、九十九院雅時で固定です。
「放っておいてくれ」の夢主の名前は月波雅斉です。

雅時と雅斉が入れ替わるというアホなお話しです。
それでも大丈夫と言う方はどうぞ。

儀なことだ』、『楔』の夢主の九十九院雅時(←固定)と『放っておいてくれ』の夢主の月波雅斉(←固定)が同じ世界にいる設定。しかも、『放っておいてくれ』の夢主君は皆と仲が良い。
んで、もし雅時と雅斉が入れ替わったら、なお話し。
そんな設定です。それでもいいという寛大な方はどーぞ!





俺は月波雅斉。取り合えず、今は全力疾走している。学園の廊下を。
小松田さんから、かつての同級生から大福が届いたと連絡をもらったのだ。
取り合えず、食べたくて仕方がないので全力疾走している。
普段鍛えた成果を出すんだ、俺!
息が辛いが、仕方がない。大福のためにがんばるぞ、俺は!
そこの角を曲がればあと少し!
更に速度を上げた俺。
そこに、角から人が現れた。
相変わらず優雅な動作で俺を見る。
九十九院雅時だ。彼にしては珍しく、目を見開いて俺を見ている。
…あ、ヤバイ。俺、九十九院とぶつかる?マジで?
危機感はあるが、どうしようもない。
ごめん、九十九院。
そんな呑気なことをしていたら、頭部に衝撃を感じて意識が飛んだ。


ふと、意識が浮上した。全身に感じる感覚からして、俺は寝かされているらしい。
あ、俺、九十九院とぶつかって気絶したのか。大丈夫かな、九十九院。謝ったら許してくれるかな。
取り合えず、俺は目を開けた。
そして、ゆっくり体を起こす。
すると、善法寺と目が合った。どうやら、ここは保健室らしい。
善法寺は俺を見ると、顔を輝かせた。

「良かった、目が覚めたんだね、雅時!」

…え、俺は雅斉なんだけどなに言ってんのこいつ。

「俺、月波雅斉なんだけど。」

俺の訂正に、善法寺は笑う。

「なに言ってるんだよ、変な冗談止めてよね。」

…それは俺の台詞だよ、善法寺!
俺はふと、自分の隣を見た。
そして、唖然とした。

「何で俺が俺の隣で寝てんの!?」

思わず叫んだ。
俺の隣には、何故か俺が寝ている。俺の叫びに、寝ている俺は顔をしかめ、目を開けて上体を起こした。

「…静かにするがよい。平時で大声をあげるなど、野蛮であろう。」

…目の前の俺は、とんでもないことを言いやがった。野蛮ってなんだ。
が、そんな目の前の俺も俺を見て目を見開いた。

「何故、目の前に私が…?」

どうやら、ぶつかった時に九十九院と入れ替わったらしい。

「つ、九十九院だよな…?」

俺の問いに、目の前の俺は肯定した。

「そなたは月波か?」

「おう。」

確認すると、沈黙した。
…どうすればいいの、俺。
すがるように善法寺を見れば、唖然としている。

「ええっと…ふたりとも、どうしたの?なんかいつもと様子が違うんだけど…。」

表情が凍りついている。
そんな善法寺に、俺の姿をした九十九院が面倒そうに説明する。

「あまり信じとうはないが、私と月波は人格が入れ替わったらしい。」

…何でそんな冷静なの、九十九院。俺、今にも発狂しそうなんだけど。
善法寺は、呆然とした様子で俺を見た。
取り合えず、何か話してみることにした。

「あー、うん。なんかそうらしい。」

肯定すると、善法寺が叫んだ。

「何で入れ替わってるの!?」

「それは俺が聞きたいぞ!」

思わず叫び返す俺。
善法寺と俺の叫びに、俺の姿をした九十九院は煩わしそうに言う。

「叫ぶのは止めるがよい。優雅さからは程遠い。」

…この状況で優雅さを求めるお前が凄いわ。てか、優雅ってなんだ。
ちなみに、九十九院が中身である俺は、一つ一つの動作が酷く優雅だ。俺でも動作次第では上品になれるのか、新しい発見だ。
呑気にしていると、善法寺が再び叫ぶ。

「いやいや、何でそんなに冷静なのさ、雅時は!てか、雅斉の姿でそんな上品に振る舞わないでよ!」

…悪かったな、俺は下品で。
善法寺の発言に、俺はイラッとした。
言われた方である俺の姿をした九十九院は、相変わらず煩わしそうだ。

「叫ぶのは止めよ、と言ったであろう。それに、私は普通に振る舞っている。」

…お前の振る舞いで普通なら、俺達の振る舞いはミジンコだ。お前、常識論がおかしいぞ。
なんか、俺も冷静になってきた。
善法寺はそうではないみたいだが。

「え、ちょ、二人とも演技じゃないよね!?」

その問いには、俺の姿をした九十九院が頷く。

「無論だ。まぁ、信じられぬのも当然のこと。適当に証明するか。よいか、月波?」

「え、あ、ああ。別にいいが…。何で証明するんだよ?」

…証明方法と言えば本人しか知らなさそうなことを言うしかないよな。
そう考えた俺。
が、俺の姿をした九十九院はもっと確実な方法を提案した。

「私が今から即興で和歌を一首詠む。月波、そなたも和歌を一首詠むがよい。」

…とんでもなく確実な方法を提案された。下手に記憶の話をするより、よほど効率が良い。
ちなみに、俺の姿をした九十九院はあっさり一首詠んだ。
ちなみに、意味はさっぱり分からない。
善法寺は呆然と九十九院の姿をした俺を見る。どうやら、俺の姿でまともな和歌を詠まれて信憑性が出てきたらしい。
俺も口を開く。…詠めねぇけど。

「え…えぇっと…。よ、夜もすがら契りしことを忘れずは恋ひむ涙の色ぞゆかしき…。」

俺に分かる和歌は、これしかなかった。ちなみに、意味も詠んだ奴も分からない。
が、この和歌を知らないらしい善法寺は俺の姿をした九十九院に助けを求める。
すると、俺の姿をした九十九院は解説を始めた。

「今の和歌は『百人秀歌』の中の一つで、中宮定子の辞世の句だ。」

…さすが九十九院。詳しかった。てか、『百人秀歌』ってなんだ。
取り合えず、善法寺は理解したらしい。

「と、取り合えずどうするのさ。中身が入れ替わったって…。」

「悩んでも仕方ないであろう。取り合えず、お互いの振りをするしかあるまい。」

九十九院はしれっと言いやがった。ちなみに、あくびしながら。とんでもなく優雅な欠伸だった。姿が俺のものであるせいで、凄く違和感を感じる。
てか、俺が九十九院の振りできるわけねぇだろうが。
何でこうなった。
俺が一体何をした。
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