放っておいてくれ
□放っておいてくれ16
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身体に蛇が巻き付いている俺。
硬直して何もできない。この類いの生き物は、取り合えず刺激しないに限る。
そのまま立ちんぼすることしばらく。何かを呼ぶ声が聞こえた。
「ジュンコ、どこにいるんだー。」
…ジュンコって誰だ。ここは忍たまの長屋がある敷地だ。女などいるわけがない。
が、その声に蛇が反応した。
何故だ。
蛇は俺の体から降りていき、声がした方へ進んでいく。
何で?
現れたのは、三年生の制服を着た少年。蛇はその少年の体に登っていく。
そこで、俺の思考が停止した。
少年が蛇に対してとて、つもなく甘い声で話しかけているからだ。どうやら、彼は俺など眼中にないらしい。
大丈夫かこいつ。
視界に五年生の制服が入るが、そんなことを気にすることもできない。
そもそも、この学園は変人が多すぎるのだ。
穴について長々と語る奴や、過激な武器やら戦輪について語る奴等、髪を 無駄に気にする奴など、考えるときりがない。
唖然としている俺の名を、五年の制服の奴が呼んだ。
「…月波先輩…?」
見てみると、立っていたのは髪の色素が薄い奴(竹谷)。たしか、竹谷だ。
ここ最近やたら人の名前を覚える機会が多くて困る。何なんだ、一体。
「何だ?」
「いや、その…。」
竹谷が黙る。妙な雰囲気になった。
蛇に話しかけていた三年生は、不思議そうに俺達を見ている。
てか、何もないなら話しかけるなよ竹谷。
取り合えず、この空気をなんとかしなくてはいけない。竹谷なんぞどうでもいいが、この空気の中にいる三年生は可哀想だ。
三年生を見る。
「お前、その蛇を探してたのか?」
俺に問われた三年生は、虚をつかれたような表情になる。
が、頷いた。
「え?あ、はい。」
「そうか。見つかってよかったな。」
「はい。先輩が見つけてくださったんですよね?」
「…まぁ、そんなところだ。」
蛇のほうが勝手に俺に登ってきただけだが。
「ありがとうございました、先輩。」
「おう。」
一通りの会話が終わると、竹谷がおもむろに口を開いた。
「…流石、生物委員をしていただけはありますね。毒を持っていた生き物にも慌てないなんて。」
「…いや、噛まれたくなくて動かなかっただけだが。…てか、お前今何て言った?」
俺が元生物委員だとか言わなかったか。