放っておいてくれ

□放っておいてくれ9
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なんだかんだで保健室でのんびりやっていた俺に、来客があった。

「雅斉、加減はどうだ?」

立花だった。俺は眉をひそめる。
…なんで来るんだこいつ。

「別に何も変わりはねぇぞ。んで、お前は何の用だ?」

突き放すような俺の発言に、立花は少し傷ついたような様子を見せた。
…なんというか、罪悪感が湧き上がってきた。いやいや、仕方ないじゃないか。まだ信用しきれてねぇんだし。自分の中で必死に言い訳をする。
立花は、俺に数枚の紙を差し出す。

「これを渡しに来た。お前が出れなかった授業の内容をまとめた。」

俺は首を傾げ、受け取る。紙には、勉強の類のことが書かれていた。内容からして、俺が出れなかった授業の内容をまとめたものだろう。
…先生がやったんだよな?

「なんだ、先生からの伝言か。わざわざすまなかった。ありがとう。」

礼を言うと、立花は少し不満げになった。
なんでだ。

「先生ではない。これは私がお前のために書いたものだ。」

…こいつ今、何て言った?なんかの罰か?
今までは俺が風邪で休もうが何しようがそんなことされたことなかったぞ。

「…悪いな。」

信じられない思いで俺は立花を見る。
立花は、少し俯いていた。

「…今までのこと、今さら謝ったところで遅いのは分かっている。だが、」

立花の言葉が途切れた。俺も顔を羞恥から赤く染める。
俺の、腹の音が鳴ったのだ。
…なんでこんな時になるんだよちくしょー!俺が一体何をした。

「は、腹減った…。」

そういえば、結局飯を食えていない。
俺は大福に想いを馳せる。最近、食べれていないのだ。
大福食いてー。
そんなことを考えていた俺に、衝撃発言が飛び込んできた。

「なぁ、雅斉。久しぶりに一緒に夕食を食べにいかないか。」

…なんか飯食いに行こうとか言って誘われたぞ。いったい何の冗談だ。てか、久しぶりにとかこいつ言わなかったか。
俺は立花を凝視し、目を数回瞬く。立花は、ただ俺の答えを待っている。
…え、なんて答えればいいの俺。
正直言って行きたくない。だが、腹は減っている。
俺は、頷いた。欲求には勝てなかった。
ちくしょー。
なんか悔しい俺とは対照的に、立花はぱっと嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「本当か!?よし、行くぞ!」

腕を引かれ、保健室の外に出て歩き出す。ちなみに、保健室の当番兼俺の監視係をやっていた左近は厠に行っている最中である。
見つかったら間違いなく怒られるな、俺。
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