放っておいてくれ

□放っておいてくれ5
1ページ/3ページ

取り合えず、医務室に到着した。医務室に来ることが大変なことだと思ったのは、生まれて始めてのことだ。
医務室の扉を乱太郎が開ける。

「月波先輩が脱走してたので連れ戻しました!」

…まてこら、猪名寺!俺は飼育されてる生き物か!まさか人間扱いすらしてもらえないとは、今までで一番酷い話だ。まぁ、こいつの場合は無意識だろうが。
ちなみに、綾部は相変わらず呑気に

「先輩、まるで動物みたいな扱いですねー。」

とか言ってる。
…なんかこいつに言われたらイラッとする。猪名寺に言われると大したことないが。生命の神秘だな。まぁ、生命の神秘なんて偉大なものを俺が気にしたところで仕方ないが。てか、綾部はいつまでここにいるんだよ。帰れよこのやろー。
何だかんだで呑気な俺に医務室の中から二人、人が近づいてくる。二年生と三年生だ。二年生がすごい剣幕で俺に怒鳴る。

「月波先輩!?今までどこに行ってらしたんですか!しかも何で泥だらけ何ですか!?」

…こっえー。あ、俺乱太郎助けた時に泥だらけになってた。マジかー。取り合えず、理由を説明しよう。てか、何故か今日は後輩に叱られる。何でだー。

「いや、あのですね、目が覚めたら授業中のようだったのでですね、参加しようと教室に言ったのですよ。」

相手の気を静めるために丁寧に言う。俺は今、後輩に敬語を使うという珍しい体験をしております。…お世辞にも、歓迎するべき体験であるとは言えないが。

「それで何で泥だらけになるんですか!?」

…どうやら全く効果はなかったようですねー。ハイ、敬語やめます。何でだちくしょー。
ふと乱太郎を見れば、とても肩身が狭そうにしている。俺が泥だらけになった原因は、乱太郎が蛸壺に落ちたことだ。責任を感じているのだろう。
…なんか可哀想になってきたぞ。ここは理由を適当にごまかすか。

「教室に行ったら実習中で誰も居なかったんだ。」

「それで何で保健室に戻らなかったんです!?」

さぁ、誤魔化せ俺!俺ならできる!

「あー、うん。その…や、山に洗濯に行ったんだよ。」

全然理由が出てこなかった。結果、アホな理由を言ってしまった。てか、洗濯に行くのは川じゃね?しかもじいさんじゃなくて婆さんの役割だし。あ、間違えた。
ちなみに、周囲はポカーンってなった。綾部もだ。てか、いつまでいるつもりだお前。そして綾部は笑い始めた。

「あはははは、先輩面白いですね〜。山で洗濯って…さぞ風変わりな洗濯でしょうね〜。」

…笑うなちくしょー。
ちなみに、俺を怒鳴っている二年生は更に怒鳴る。

「なにアホなこと言ってるんですか!」

…喉枯れるぞ、お前。喉枯れた時に授業で音読当てられたら辛いぞ。
俺と同じことを思ったのか、黙っていた三年生が俺を怒鳴る二年生をたしなめる。

「まぁまぁ、左近落ち着いて。」

左近というらしい二年生は渋々と言った様子で落ち着く。三年生は俺を見た。

「月波先輩、取り合えず背中を見せていただけますか。」

…何か影薄そうな奴だな。まぁ、いい。俺は影薄そうな奴に首を横に振る。

「いや、いい。自分で何とかする。今まで世話になったな。」

今までだって何とかしてきたのだ。今更世話になろうとは思わない。
俺は立ち去ろうと背を向ける。すると、さっきまで俺を怒鳴っていた二年生が声をあげた。

「制服に血が…傷口が開いてます!綾部先輩捕まえてください!」

…は?こいつ綾部に何て言った?捕まえてください?

「捕まえるって…こう?」

俺がポカーンとしていると、綾部に羽交い締めにされた。ちなみに、背中への配慮はまるでない。

「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!痛い!綾部、痛い!離せぇぇぇぇぇ!」

俺は絶叫する。ここでは先程のように我慢する必要はない。
見ていた影薄そうな奴(数馬)と左近というらしい二年生にら乱太郎は慌てて綾部を止める。

「ちょ、やりすぎですよ綾部先輩!」

「数馬先輩のおっしゃる通りです!月波先輩は怪我をしていらっしゃるんですよ!」

「綾部先輩!」

三人の懇願により、綾部が俺から離れる。

「月波先輩、大丈夫ですかぁ?」

そして相変わらず呑気に(←ここ大事)に俺に聞きやがった。
…大丈夫な訳あるか!
俺が反論しようと口を開くと、医務室の扉が開いた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ