放っておいてくれ

□放っておいてくれ27
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六年生が斉子の部屋を出た頃には、全員揃ってげっそりしていた。勿論、雅斉も。

…なにあの面倒な女。同じ顔でしかも面倒な女って…。
赤点やらいきなり泣き始めるやら、なんかもう意味わからん。
ちなみに、六年生は固まって歩いているが、全員無言である。
誰か話せ、空気重い。
そんなことを思って、俺の後ろを歩く奴等を見る。

「…おい、空気重いからなんか話せ。」

そう言うと、口を開いたのは七松。こいつにしては珍しく、真面目な表情。

「なぁ、雅斉と同じ顔したあの天女、悪い奴じゃないと思うんだ。」

すると、同意する中在家。

「…手に、傷はなかった。」

…お前は声出せなくなるような心の傷でもあるのかよ。もっと声張れ、声。
でも、確かにあの女の手は綺麗だった。武器を握るやつの手は、大抵傷があったりで分かるものだ。
武器を握ったことがないということで間違いない。

「なら、これは?」

俺は手にした書物を見せる。もちろん、あの女が持っていたものだ。
それを見て、ケマは首をかしげて中在家を見る。

「俺はその文字が分からない。長次、お前は見たことないのか?」

「…ない。」

…こいつは博識な奴という扱いらしい。教養の科目で困ったら、こいつに聞きに行こう。
取り合えず、あの女の顔といい意味不明な文字が書かれた書物いい、本当に意味分からん女だ。
なんか面倒になり、外の茂みに目を向ける。
…なにあれ。
その茂みがモゾモゾしていた。
しかも、青くて模様の入った布が見える。一年生らしい。
モゾモゾの位置は、段々と遠ざかって行く。その先は、天女が居る部屋。
なんというか、好奇心旺盛な奴等である。
ちなみに、俺の後ろの奴らは呆れていた。

「…また一年は組か?好奇心旺盛な奴等だな。」

…ケマ、今回ばかりは激しく同意する。
好奇心旺盛なのは悪いことではないが、天女に関してはまだ安全性が保証されていない。一年生が近付こうとするなら、止めなければいけない。

「…俺が止めてくるから、お前らは行ってろ。」

そう言って、俺は駆け出した。
なんか、安心した。
奴等と居ると、なんか疲れるのだ。
いいことねぇな、俺。
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