放っておいてくれ

□放っておいてくれ26
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結局、女を途中で気絶させて学園に戻った。
赤点やら試験に関しては妙に親近感を抱かせる女だったので、俺たちが抱く警戒心も微妙なもの。
俺たちの間では、女のことを『天女』と呼ぶことになった。
誰がつけたかよくわからないそのあだ名は、妙に納得させられるものだった。
『天女』の由来が、一に天から降ってきた女だから。二に、赤点がなんとやらとか言っていたから。
その双方を足して『点女』の方が面白いんじゃないかと言った奴がいるが、読みは同じなので結局『天女』になった。てか、不審者のあだ名に面白味求めんな。
そして天女、学園で目覚めて早々に厠に引きこもったらしい。




一方厠では、斉子が頭を抱えていた。
…どうするのあたし!
なにこれあたしの夢の中なの!?それともアニメの中!?てか、どっちも一緒!?
訳分からん!
てか、雅斉いるし、夢の中なんだよね!?アニメにいないはずだし!
え、てことは雅斉に外見そっくりなあたし、上級生に攻撃される?それとも和解後だから大丈夫なの?
どっちよー!?
てか、試験どうしよ!?いや、それどころじゃないのか。
え、でもどうしよう!?
あ、なんかもう何に対してどうしようって思ってるのか分からなくなってきた!

「あの、天女様?」

…外から声かけられた。天女ってあたしのこと?
誰よこの声。名前聞けばわかるかな?

「な、名前をお願いします!」

「五年い組の久々知兵助ですが…。」

…まてまて聞いたことあるぞ、その名前。
忍たまの腐向け大好きな友達が語ってた!思い出せあたし!
えっと、松谷くん?あれ、竹谷くん?あれ、梅谷だっけ?
松竹梅のどれだっけ?
まぁいいや。
その松竹梅+谷くんとちょっとアブナイ関係なんだっけ?

「天女様?」

今度は別人に声かけられた。今度は誰?

「名前をどうぞ!」

「…五年生ろ組の鉢屋三郎です。」

…お、この名前も分かる!友達から聞いたぞあたし!
変態で同じ顔とアブナイ関係なんだっけ?
てか、同じ顔とって…。双子?男同士で近親相姦じゃん。
うわ、こいつないわー…。
でも、まだ若いし戻れるよ、きっと。

「…あのね、今なら遅くないと思うの。男でしかも血の繋がった人間より、血が繋がってなくて綺麗な女の人はたくさんいるよ。ね、まだ若いんだし。」

あたしの言葉じゃ心には響かないかもしれない。でも、双子でそういう関係だと両親がなくと思うの。
だから、今は分からなくていい。きっといつか分かると思う。人間失敗して大きくなるもの。
なんかいいことしたなあたし!
…あれ?いやいや、それどころじゃなかったぁぁぁ!




一方、斉子と厠の扉を一枚隔てた先にいる五年生は、見事に凍り付いた。
三郎は仲間たちを見る。

「…なぁ、私は、天女様、と声をかけただけだよな?あの女、私の性癖に関して絶大な勘違いをしてないか?そもそも、天女様、と声をかけただけで何故勘違いされる?というか、勘違いされる要素あるのか?」

降りる沈黙。
が、その数秒後、尾浜が思い切り噴出した。

「ぶっ…あはははは!三郎が…!あはははは!」

それを機に、その場にいた竹谷、兵助も笑い出す。

「あはははは!」

四人の笑い声が混じる中、不破だけは苦笑いを浮かべ、三郎は心底嫌そうな顔をしている。



一方斉子は、扉を一枚隔てた先で大爆笑している五年生たちに戸惑っていた。
…え、なんで笑ってるのあの人たち!?
え、なんでぇぇぇ!?
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