放っておいてくれ

□放っておいてくれ25
4ページ/5ページ

それからついに迎えた実習の日。
上級生は何やら実習について話し合っていて、下級生たちは遠足気分、といった感じだ。
が、それは教師の説明を聞くまで。
内容はなかなかに難しいものだった。

「……なにそれすげー大変。」

俺は思わずそうつぶやいた。
行動は委員会単位で行う、まではいい。
そこから先が超過酷だ。
まず、各委員会に一つずつ各委員会名が書かれた札が配布される。
簡単に言えば、委員会単位でその札の取り合いをしろとのことだった。
札を持つのは一年生と限定されている。上級生たちで必死に一年生を守らなくてはいけない。
しかも、ただの委員会対抗戦ではない。
委員会に所属していない者も札を奪いに来る。
上級生は下級生を守ることが求められ、下級生は戦闘に参加するのは端から不可能であるため、足手まといにならないための立ち回りが求められる。

「…生物委員だと一年生が多いので不利ですね…。」

そう難しい顔で言う伊賀崎。
さっきまで遠足気分な表情だった一年生たちは、説明を聞くとすぐに恐ろしく暗い表情になった。
ぽん太(竹谷)は何かを考え込んでいる。
確かに一年生が多いとやりにくい気がするが、こいつらが考えているほどでもない。
取りあえず、雰囲気を変えなくてはいけない。

「あのな、この実習は一年生が多いと案外得だぞ。」

「え?」

ぽん太以外が、揃って首をかしげた。下級生だからか可愛らしい光景だ。
癒される。

「いいか、札を持つのは一年生だ。一年生が多いと、敵に誰が札を持っているかを誤魔化すことができる。だだ、この委員会だと攻めていっても攻撃力がまるで足りんからな。しかも機動力もない。だから襲ってきた奴らを狙うことにする。」

いいな、と俺は続けようとした。
その時、六年生の一人が駆け寄ってきた。
中在家だ。

「…雅斉、緊急事態だ。」

…相変わらず、声張れよ、と言いたくなるような声だ。
しかも、緊急事態ってなにそれ。

「緊急事態?」

「…女が、上から降ってきた。実習は取り合えず中止で、説明を受けだ場所に戻れと指示が出た。」

…意味わからん。何て言ったこいつ。
女が上から降ってきた?女って降るもんじゃねぇだろ。いや、だから緊急事態?
てか最近、実習中止多いな。俺が怪我したときもそうだったらしいし。
不思議そうな顔をしている後輩たちを引き連れて、取り合えず指定されている場所に戻った。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ