放っておいてくれ

□放っておいてくれ25
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顔をしかめている竹谷。
俺は奴を見下ろした。

「これで俺の気はすんだからな。だから、もう気にするな。」

そういうと、奴は泣き出した。
小さく、ありがとうございます、と呟いたのが聞こえた。
竹谷は本気で悩んでいたらしい。なんか、俺との温度差が凄まじい。
もう嫌だ。




結局、そのまま竹谷は寝てしまい、奴は俺の部屋に泊まることになった。
朝になり俺は奴を起こす。
なんか晴れやかな顔で寝ている。
ぽん太だな、こいつ。うん、ぽん太。
ぺしぺしとほっぺを叩く。やっぱ上級生のほっぺの感触はイマイチだなぁ、おい。

「…ん?月波先輩?」

「おはよう、ぽん…じゃない。竹谷。」

状況を把握したらしい竹谷が、慌てて飛び起きた。

「俺、もしかしてあのまま寝たんですか!?」

「おう。酒飲ませたからな。気にすんな。」

俺が気軽に言うと、ぽん太…じゃない、竹谷は頭を下げた。

「すいませんでした!」

…俺今気にするなって言ったよな。なんなのこいつ。
まぁ、それはいい。
俺、こいつのことぽん太って呼びたい。

「なぁ、竹谷。同じ委員会で、名字呼びはなんか悲しいと思うんだ。」

「あ、はい。」

やつはキョトンとしたが、なんか期待するような表情になった。
お、これはいけるかも。

「なぁ、だからお前のことさ…」


「はい!」

お、いけるな、これは。なんか嬉しそうだし。

「ぽん太って呼んでもいいか?」

「はい…って…はい?」

返事をしたかと思ったら、首をかしげられた。

「えっと、俺の名前は八左エ門ですけど…。あの、それならハチとか、八左とか…。」

「いや、俺はぽん太って呼びたい。」

いいじゃん、ぽん太。

「あの、なんでぽん太なんですか?」

「それはお前がぽん太って感じだからだろ。ダメか?」

「いや別にダメってことはないですけど…」

あ、許してくれた。やっぱいいよな、ぽん太ってあだ名。
なんか俺、嬉しくなってきたぞ。

「よし、じゃあ行くか、ぽん太!」

「…はい。」

竹谷は首をかしげつつ頷いた。
自分のどの辺が、ぽん太、なのかさっぱりわからない。
でも、雅斉は嬉しそうにしている。もう彼のそんな表情を見ることはないと思っていた。
ぽん太、に関しては疑問が残るが、まぁいいか、なんて思った。
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