放っておいてくれ

□放っておいてくれ20
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「時生は雅斉のこと、僕たちだけじゃなくて自分も悪いと思ってるんだろう?」

伊作にしては珍しい、厳しい声音。
時生は彼らから視線を外して頷いた。

「…当たり前だ。原因を作ったのは俺だからな。」

「雅斉のことに関して、悪いのは君じゃない。もちろん、桐蔵でもない。悪いのは君たちを信用しなかった、そしてその間違いをずっと正せなかった僕達だけだ。」

「何を…」

伊作の発言に驚いた時生は、思わず伊作達を見た。彼らの意思の強さが籠った目に、時生は少し動揺した。
それに構わず文次郎が言う。

「伊作の言う通り、雅斉のことに関して責任があるのは俺達だけだ。俺達のものを勝手にとるな。」

次は仙蔵が続く。

「その責任だけが私達と雅斉を繋ぐもの。だが雅斉との関係をここまで拗らせて、事をここまで大きくしたのは私達だ。今さら何を、と思っているだろう。私達も、自分達のしていることが卑怯で都合のいいことだとは分かっている。だがそれでなにもしないのでは、今までと何も変わらない。」

仙蔵の表情に悔しさが滲んだ。一年の頃ちゃんと間違いを認めていれば、こんなことにはならなかった。悔いても悔いてもきりがない。それは、六年生全員が同じ想いだ。

「…今まで何とかしたいと思っても、何もできなかったからな。」

最後の長次の言葉が、時生の胸に突き刺さった。自分も同じだった。雅斉が疎まれる原因を作っておきながら、なんとかその状況を打開したいと思っても何もできなかった。
その点では、六年生達と何も変わらない。結局、自分に六年生達を責める資格などないのだ。

「…もう、いい。あとは雅斉が決めることだ。」

時生は力をなくしたように、小さく呟いた。
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