放っておいてくれ
□放っておいてくれ12
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「月波君、ちゃんと髪のお手入れしてる?髪の毛がすごい荒れてるよ!」
…どうでもいい話だった。てか、俺は髪にこだわりなんかねぇ。やけに熱心に俺の頭を見てたと思えば、そんなどうでもいいこと考えてたのか。
アホか、お前は。その観察能力を別に使えよもったいない。
「いや、俺は別に髪にこだわりなんてない。」
「何言ってるの!?その髪じゃ髪に対する冒涜だよ!」
…何言ってんの、こいつ。神に対する冒涜ならまだしも、髪の方とか意味わからん。めんどくせぇ。こういう奴は平謝りに限る。
「悪かった、以後気を付ける。」
「ちゃんとしたお手入れの仕方、知ってるの!?」
「ノリでなんとかなるだろ。」
…一体どんなノリだ。
自分で言ってそう思った。なんか俺、最近駄目かもしれない。
バナナ頭は身を乗り出した。
「だめだよ、そんなことしてたらもっと髪が痛んじゃう!放課後、僕が教えてあげるから!」
…いやいや、結構です。粗品にタワシが付いていても結構です。
「いや、俺は別にい…」
「絶対だよ!」
「あ、ハイ、行きます。」
…押しきられた。最近の俺は、やたら情けない気がする。
俺が頷くと、バナナ頭は満足そうに食事を開始した。
…俺は全く納得してねぇがな!ちくしょー。
ふと綾部を見ると、不服そうに俺を見ていた。
「先輩、僕の話し聞いてくれるって言ったじゃないですか。」
…いやいや、言ってませんけど。
なんなのこいつ。
「あー、うん、悪かった。」
ちなみに、俺はいっこうに箸が進んでいない。
四年生ってめんどくせぇ。
ため息をつくと、ふと麿眉みたいな変な眉毛の奴(←滝夜叉丸。以後は麿眉と表記します。)と目があった。
彼は、戸惑ったように俺を見ている。
「なんだ?お前も語りたいことがあるならなんでも語れ。」
俺は半ば、ヤケクソだった。
てか、俺相手に語り始める奴なんているはずがないのだ。
が、俺の発想は甘かった。
なんと、麿眉は信じられないといった顔をした後、目を輝かせた。
え、なんで。
「では、私は戦輪について語りましょう!」
…マジかよ。てか、なぜに戦輪?
意気揚々と語ろうとする麿眉を、隣に座っていたなんかかわいい奴(←田村。以後はなんかかわいい奴と表記します。)が制した。
「待て滝夜叉丸。その前に私が過激な武器について語る!」
…うわ、めんどくさ。
どうやら、自分の好きなことについて語れるのが嬉しいらしい。
俺は全く嬉しくないが。
その後、俺は長々と戦輪と過激な武器についての話を聞かされた。はっきり言って、ここまで疲れた朝食は初めてである。
げっそりして食堂を出ようとすると、再び声をかけられた。
「あ、月波先輩、おはようございます!」
「おはようございまぁーす!」
「おはようございます!」
口々に挨拶された。よく見ると、一年は組の連中だった。
相変わらず元気だ。
「おお、おはよう。相変わらず元気だな。」
見ていて和むから、彼らは偉大だ。
は組とすれ違い、食堂を出ると前方に五年生五人が見えた。
以前、自殺しそうな雰囲気を漂わせていた五人だ。
視線は、俺に向いている。
…めんどくせぇー。
なんか、今日は朝から面倒なことが多すぎるのだ。本当に勘弁してほしい。
まぁ、視線には慣れている。だから、素通りしようとした。
が、声をかけられた。
「あの…月波先輩!」
…お前ら、俺に恨みでもあるのか。
そろそろイライラしてきた俺である。
「なんだ、五年生。」
「その…。」
なんと言えばいいか分からないらしく、五年生は口を閉じる。
…大した用がないなら話しかけるなよな、めんどくせぇ。
「用がないなら、俺は行くぞ。」
声音にも面倒だと思っていたことが出ていたかもしれない。だが、出してしまったものは仕方がない。
雅斉は、歩き出した。