難儀なことだ
□難儀なことだ6
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雅時が教室に戻ると、授業開始時間が近いためか、い組の生徒が集まっていた。
次の授業は、教養の類いのもの。恐らく和歌や俳句だろう。
自席についた雅時に、仙蔵が近づいてきた。
「雅時、大丈夫だったか?」
仙蔵の様子に雅時は少し驚いた。
彼が心配していることを示すなど、あまりある事ではない。
「大丈夫だ。少し文句を言われたくらいだ。他はどうか?」
雅時の問いに、仙蔵はうんざりした表情を見せた。
「留三郎や伊作は天女様に何かと世話を焼いているらしいな。あと、文次郎が田村が天女様に夢中で困っているとぼやいていた。」
「なるほど。委員会としては、難儀なことだな。」
「お前な、他人事みたいに言うな。」
「何を言う。私にとっては、十分他人事であろう。…まぁ、人手が足りないところに手伝いくらいは行くが。」
教師が入ってきた。自席についていない生徒が慌てて席に戻る。
どうやら、授業開始時間のようだ。
窓から外を見れば、綺麗な青い空。面倒事が起きていることから、いつもと変わらない綺麗な空に、少し苛立ちを覚えた。
雅時は小さく
「なるほど、相変わらず美しいことなによりだ。まるで他に影響されぬな。我関せず、といったところか。私もそうできたらよいのだがな。」
と呟き、一人苦笑した。