放っておいてくれ

□放っておいてくれ26
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俺にそっくりで赤点がなんとやらとか叫んでいた女は、月波斉子と名乗った。
それに対し、俺やその周りの奴らは驚きを隠せなかった。
名字が俺と同じで、女が名乗った名前は俺が女装したときに使う名前だったからだ。

「…なぁ、お前もしかして俺の双子の妹かなんかか?」

そう思った俺はきっと悪くないはずだ。だって顔と名前似てるし。てか、顔なんて瓜二つ。
が、斉子は不服げになった。

「違うよ。てか、なにここ。コスプレ大会か何かですか?あたし、アニメの中に入ったとか考えたくないよー。」

…こすぷれ大会ってなにそれ。あにめってなんだよ。

「…意味わからん言葉使うな。」

「え?コスプレ知らないの?アニメも?」

斉子は心底驚いたらしい。こすぷれってなんだよ。

「あれ…皆、持ってる武器、本物なの?あれ、銃刀法は…?」

斉子の顔が青ざめ始めた。
いやいやいや、大怪我しないようにちゃんと処理してある武器だからねこれ。偽物と本物の間くらいだな。
てか、銃刀法ってなに。
そしてなんで青ざめてるのお前。
しかも、その変わった格好はなに。
…なんというか、突っ込みどころ満載な女である。

「…あの、ちょっとあたしの頭、殴ってもらっていいですか?」

…自虐趣味?なにこの女。
この発言には、周りに居た殆どの奴が唖然とした。
が、女は一方的に騒いでいる。青白い顔で。なにこれこわい。

「え、ちょ、なんであたしこんなことになってんの?ここあれだよね?コスプレ大会の会場だよね?じゃないとアニメの中ってことになるんだけど…!だって、見たことある顔がちらほらあるし!あれ、どうすればいいのあたし!てか、アニメの中ってことはあたしも全国に放送されてる?え、今の格好、中学の体操服なんだけど!全国のみなさーん、あたしは高校生ですよー!中学の体操服はものがいいから部屋着にしてるだけですからねー!…て、違う!なにやってるのあたし!?」

…最後に関しては、俺らが聞きたいことである。あとのことは言ってる意味がわからん。
なにこの女。
見かねた土井先生が、女をたしなめに行く。すっごく困惑した表情で。

「取り合えず、落ち着きなさい。」

これで落ち着け女。
誰もがそう思った。が、女は土井先生を見て凍り付いた。

「は、初恋キラーだ!あたしは周りほど好きじゃなかったけど!…いや、違うか。あたしはどうしよう、あたし、本当にアニメの中に入っちゃったの!え、ちょっとやだ!もうすぐ試験なのにぃぃぃぃ!」

…最後の最後で妙な親近感を抱かせる女である。
試験は俺達だって嫌だ。なにこの無駄な親近感。
それより、土井先生が行ったことで落ち着くどころか逆に混乱度が増した女。
どうするのこいつ。
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