放っておいてくれ

□放っておいてくれ20
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雅斉が下級生を泣かせて戸惑っていた頃、時生は六年生と話していた。
空気は酷く重く、時生の表情は不機嫌そのもの。
六年生達は思い詰めたような、それでいて決意に満ちた暗い表情だ。
何故いきなり雅斉への態度が変わったのか、今までどういうつもりだったのかを話す。
説明を聞いていた時生は、不機嫌を隠そうともせずに六年生達を見る。

「…正直、俺はお前らがそこまで考えているとは思わなかった。」

雅斉を虐めたことは、何があっても許せない。
だが、その原因を作ったのは自分の不注意だ。それに自分が彼らの立場だったら、彼らと同じようになっただろう。
あのときの自分達は、自分の間違いを素直に認めることができるほど大人ではなかった。それに、関係修復が可能なほど器用でもなかったし、そこまでの信頼関係もなかった。

「なぁ、時生。一つ聞いてもいいか?」

「なんだ、七松。」

「お前はここにいた頃、何を考えて雅斉と一緒にいたんだ?」

「何を、だと?」

思わず時生は鼻で笑った。

「そんなこと、考えたこともない。俺とあいつは親友だ。一緒にいる理由をわざわざ考える必要なんてあるわけねぇ。お前らが仲良くしている理由もそうだろ。」

本当なら、雅斉も仲のいい六年生達の一員だったはず。
自分があの時、不注意で崖から落ちなければこんなことにはならなかった。
この学園で辛い思いをさせることもなかったはず。
六年生達も、たくさん苦しんでいることを知った。それは雅斉を苦しめた罰だ。だが、それも全て自分が原因。
桐蔵もまた、自分を責めている。その原因も、自分の不注意。
結局、悪いのは全て自分なのだ。
悔しさのあまり、唇を噛み締めた。ここまで自分を恨んだことはない。

六年生達のことが完全に意識から消えか消そうになったとき、左頬に鋭い痛みが走った。
原因は、伊作だ。
雅斉は伊作を睨み付けた。極悪非道面と称される、恐ろしい表情で。が、伊作は一切動じなかった。
彼にしては珍しい、厳しい表情。他の六年生も同様だ。
その表情に虚を突かれた。
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