海の上の日常。
□恋心。困惑編
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「あ?お前この刀の良さがわかるのか?」
「うん!…あ、詳しい事は分からないよ?でも何て言うかオーラが出てるっていうか空気が違うというか…感覚的に。すごいって感じるんだよね…」
芝生で昼寝してたとこ、どうも視線を感じると起きてみれば…こいつがちょっと離れた所からしゃがんで刀を見つめてやがった。
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「何見てんだ?つーかこの距離感はなんだよ…?」
「あ、いや勝手に刀触ったら悪いなーと思って…それに傍で怪しい動きしたら切られそうだと思って。」
最後の方何で声小さくなってんだよっ。
何か知らねぇが刀触りてぇって事か…こいつ。
つーか言ってる間も目ェキラキラさせて刀の方見やがって。わかりやす…。
そんなこんなでこいつに刀を見せてやっている今現在。
「うーん、でも感じるだけじゃなくてよく見ると造りもすごいよコレ。へー…良く出来てる…かっこいい…」
刀を触らせてやると細部まで舐め回す様に何度も角度を変え、じっくりと見ている。
俺の方には見向きもしねぇ。
…しかしそんなに目の前で自分の刀見られる事もそうねぇからか、嬉しい様な気恥ずかしい気分だな。
でもまぁ、その目は真剣で素人の雰囲気では無かった。
流石というか、世界取ったヤツはちげぇんだなと思わされた。
いっつもぼーっとしてやがるが、こいつはすげぇ芸術家だもんな。
「ゾロ…抜いたらだめ?」
「ああ、構わねぇよ。特別な。だが気をつけろよ?」
※※※は重そうに鞘から抜くと光にかざした。
「わー…すごい。綺麗……」
「……っ。」
思わず息を飲んじまった。
綺麗ってお前、俺はお前の方が綺麗だと思っちまったよ。その表情やめてくれ…!
…何処ぞのラブコックじゃあるめぇし、どうかしてるな今日の俺は。
「ねぇ、ゾロわかる?ほらこの造形美!…ここの刃紋がさぁ…。ほら見て。この曲線も綺麗だなぁー…」
「楽しそうだな。」
「?うん、楽しい。」
「…俺は芸術の事はわかんねぇけどよ。…お前ぇがすげぇ事は分かった。」
「え?」
「初めからどうもへらへらしてる割には、普通じゃねぇ気を放ってると思ってたが…。本物だな。お前ぇが刀の事知らなくてもすげぇって事が分かる様に、俺にもお前ぇがすげぇって事が分かる。」
「ゾロ……。嬉しいっ!ありがと!!」
「ゔおっ!バカっおまっ…危ねぇ!!」
チッ…やっぱドジだ!すげぇヤツでもこいつ!とてつも無くドジだ…!!
俺の言葉に気を取られ過ぎて、※※※は手から刀を滑らしちまった。このままいくと腕切り落とされちまうぞ…馬鹿!
俺は刀を受け止めるより※※※を引っ張った方が早ぇと判断して思いっきし引き寄せた。
「あ…」
「っぶねぇな…!馬鹿!何してんだよ!!!!!」
…あれ、いつの間にかわたし。ゾロに思いっきり抱きしめられてるよ?
あ、ゾロ心拍数早い。
わたしの事叱ってる。
「ごごめん…なさい。…ゾロ、ありがと…」
今更ながらゾロが助けてくれなかったらどうなってたのか分かって、体が少し震えた。
「アホ…今更震えてんじゃねぇよ。」
「は…はい、だって。…」
深呼吸したら、ゾロは溜息をついて背中をポンポンとしてくれた。
*・゜゚・*:.。..。.:*.。.:*・゜゚
「は……?」
おいおいおい、
何だこれ。
冗談キツイぜ?
本当に
何だってんだよ…
悪夢だ!
※※※ちゃんと話したくてキッチンから出ると、マリモの野郎が※※※ちゃんの事…
抱きしめてるじゃねぇか。
さっきから※※※ちゃんとマリモの声が遠くからチラチラ聞こえたが。
どういう事だよ、この状況。
甲板にはバカ三人がいるが、昼寝真っ最中で全く気づいてもいねぇ。
ロビンちゃんとブルックはキッチン。
フランキーも姿が見えねぇから中にいるんだろう。
唯一ナミさんは上の蜜柑畑から目撃していた様子だった。
とりあえず、あんにゃろう!許せねぇ!!
ダダダダダダッ!
「おいっ!!クソマリモ!!てっめぇ!俺の※※※ちゃんに何してやがる!さっさと離れやがれ…!!!」
「サ、サンジ…くん!」
「ああ、うっせーのが来た…」
「はあぁぁ?!んだと!オロすぞ?!てめぇ!」
「…別にてめぇのもんでもねぇだろ。」
!
何だその意味深なセリフは。
「サ、サンジくんっ!ゾロは悪く無いんだよ、怒らないで。」
※※※ちゃんは俺とマリモの間に立つと慌てて俺に訴えてきた。
「※※※ちゃん…大丈夫かい?」
「っ!!」
(は!!うわ!サンジくん…!近い!かっこいい!ややややっぱまだだめだ…!)
「じ、じゃあまた後程…!」
ぐい!
「げ!何で俺もなんだ…っ!?」
※※※ちゃんの頬に触れようとすると慌てた様子でマリモを連れて走って行っちまった。
「後程って※※※ちゃん……。」
おい、※※※ちゃんあんまりだぜ?
そういう事…じゃねぇよな?
まさかマリモとできてるっていうのか?
はっ…いやー、まさかな。
いやー…まさか。
「………。」
気持ちを落ち着けようと煙草に火をつける。
しっかしマリモのセリフといい、※※※ちゃんだって何故かマリモを庇ってたし。
…※※※ちゃんの事だから何か理由があるんだろうとは思うが。
でも何故マリモの手を引っ張って去るんだい?
「はぁ…クソ…。」
余裕ねぇな、俺。
クソかっこ悪りぃ。
思いっきり煙を吸い込むと首をガックリと落として静かに吐き出した。
暫く俺は座り込んでぼーっと煙草をふかした。
「サンジ君。」
「…ナミさん。」
ハッとして顔をあげると蜜柑畑の手すりに肘をつき、見下ろすナミさんに呆れた顔をされた。
「サンジ君、何て顔してんのよ。」
「え?」
「顔。げっそりしてるわよ?」
「へへ、…いやぁ、もしそうならナミすわぁんに飢えてそうなっちまったんだっ!」
「ばか。」
近づいてきたナミさんは、俺を一喝すると目の前で止まる。
「サンジ君、正直に言いなさい。」
「?」
「好きなんでしょ?」
「え…」
少しの沈黙の後、にやっと笑うとナミさんは俺の耳元で呟いた。
『※※※の、コ・ト 。』
ああ、流石ナミさん。
やっぱり見抜いてるんだな。
ていうか、気づかねぇ※※※ちゃんの方がおかしいか。
こんだけアピールしてるんだ。分かるよな、フツー。(まぁ、そういうとこもクソ好きなんだが!)
そんな風に※※※ちゃんの事を考えただけで、胸が締め付けられる様でそんな自分に少し笑ってしまった。
「ああ…クソ大好きだ。」