ディアラバ

□死に損ない願望
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穀潰し

役立たず




そんな言葉、もう聞き慣れてしまった

俺は穀潰しで、役立たずで屑だ。そんなことはとっくの昔…あの日に痛感した

俺なんかいない方がいい

俺はただただ家の飯食って寝るだけの生活を送っている

『しんでしまえよ』

『お前の存在意義はどこにあるんだというの?』

…わかってる

俺なんか死ねばいいのに

『ならどうして自殺でもなんでもしないの?』

『怖がっているんだろ?』

『お前は死ぬことが怖いんだ』

『この臆病者』

俺は窓から頭と腕を放り出す

指先には地面

ヴァンパイアでも死ぬことは怖い

死ぬことなんて怖くないという強がりほど見苦しいものはないのだ

死ぬのは、怖い

昔の友が向こうで待ってくれているかもしれないが、もしかしたら俺は彼と同じ場所にはいけないかもしれない

天国があるかどうかもわからない

あぁ、後ろから誰か心臓を刺してくれないだろうか

どうせ弟たち…とくに次男は俺のことをよく思っていないのだからとさりげなく後ろをみても、俺以外誰も存在していないリビングが広がるだけ

死にたいわけじゃない

俺という存在がこの世という世界から消えればいいと思う

痛みも何も感じないで、誰にも気づかれずに消えてしまいたい

『なら、今のうちにどこか遠いところにでも行きなよ』

それができないからここにいるんだろうが

『どうして?』



俺の頭上で、白い大小様々の泡が上っては消えて行く

水面は電気を反射してキラキラと輝いていた

苦しい

酸素を求めて俺の喉はきゅうと縮こまって圧迫し、肺もいい加減酸素をくれともがいて苦しくなってくる

苦しい、苦しい、くるしい

そのまま水死する俺

…を想像しながら湯から顔をだした

喉が異様な音をたてて一気に酸素を取り込んだので激しくむせた


今度は胸にナイフを当ててみた

鋼の鋭いそれが俺の胸の皮膚を切り裂いて行く

痛みを感じてやっぱり刃先を離す

鼻を刺す自分の血の臭いと、ヒリヒリと現実を突きつけてくる胸の痛み

気持ち悪い


今度は拳銃を頭に当てた

この中には俺の頭を貫くであろう鉛玉が入っている

指を動かせばひと思いだ

そう思って、一気に指で金具を引いた

「…って」

俺の頭には、BB弾が勢いよく当たるだけだった


何をしても思うだけ

俺の脳内で何人の"俺"が犠牲になったのかは数しれない

『思うだけただでよかったね』

そう言って皮肉げに嘲笑う"あの頃の俺自身"

このとき、自分が何かすれば不幸なことがおこるのだと感じていっそ何もせずに過ごせばいいと思った瞬間の"自分"

今の俺自身

『死んでしまえばお前のことを知る誰も彼もが清々するのに』

"俺"は俺に嫌味を言い続ける

聞かないようにしても耳にはいる言葉

『やっぱりガラクタでしかない』

『なんの役にも立ちそうにないゴミ』

『弟たちも、どうしてこんなゴミを捨てに行こうと思わないのかな?』

うるさい、黙れ!

お前がいなくなればいいのに

お前のせいで、俺は

『そうして今度は僕を殺してどうするの?』

強く首を締めても平然とぺらぺら喋る"俺"

『僕がいなくなれば君は今度こそ死ぬ覚悟を決めなくなる。そうすれば、本当にただのゴミになるでしょう?』

『今、お前は何を握りしめてるの?』


「おい…シュウ!」

「…え、」

俺を呼ぶ声で我に返る

顔をあげると、うっとおしそうな、困ったような顔をしたスバルがこちらを見つめていた

「何してんだよ、俺のナイフで…」

そう言われて初めて手のひらに激痛を感じてそちらに目を向けた

俺が"俺"の首だと思って握りしめていたものは、真っ赤に染まった銀製のナイフだとそのときに気づいた

「ったく、血は落ちにくいってーのに…」

俺の手のひらからナイフを取り返すとブツブツと呟きながらスバルが部屋から出て行った

「……あぁ」

これくらいではヴァンパイアである俺は死なないだろう

そう思いながら血だらけの手で自分の頭をぐしゃぐしゃにかいた

もしかしたら

"あいつ"の流れに任せていれば

こんな馬鹿げたおままごとも終われたのかもしれないのに

結局俺がここから離れられないのは、先ほどのように誰かに止めて欲しいからなのだとも理解して

落ちてきた赤黒い前髪を見つめて深くため息をついた


「また、しにそこねたなぁ」









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某鏡音曲を聞いて衝動的に書いたもの

エドガーの件で何もせずに暮らした方がいいと決めたシュウ様の気持ちを考えると私も苦しいです←

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