花紅柳緑

□月が欲しいと泣く子供
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 川端康成



 1 別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。


 2 人間は、みんなに愛されているうちに消えるのが一番だ。


 3 健全な愛は健全な人にしか宿らないものだよ。


 4 死んだ時に人を悲しませないのが、人間最高の美徳さ。


 5 一輪の花は百輪の花よりもはなやかさを思わせるのです。




 6 死んだ者の罪を問わないのは、 今は生きていてやがて死ぬ者の、深い真理かもしれませんよ。


 7 誰にもかれにも、同じ時間が流れていると思うのはまちがいだ。


 8 犠牲を清らかならしめよ。自分を犠牲にした者は、自分を犠牲にしたことを忘れるのが、美しい犠牲の完成なのだ。


 9 一生の間に一人の人間でも幸福にすることが出来れば、自分の幸福なのだ。


10 僕は生きている方に味方するね。 きっと人生だって、生きている方に味方するよ。




11 一輪の花美しくあらば、われもまた生きてあらん。


12 たとえばどんなにいいことにしろ、 それを知るべき年齢よりも早くそれを知れば、 それは悲劇の色しか帯びない。


13 どんな花かて、見る時と場所とで、胸にしみることがあるもんや。


14 ささいなことが私たちを慰めるのは、 ささいなことが私たちを悩ますからだ。


15 あなたのだいじなものはだいじにすることね。たとい苦しくっても、だいじにしてよかったと思う時が、きっと来るわ。




16 愛にもやはり、大切な時というものがあると思ったわ。 愛してさえいれば、いつでも結びつけると考えるのは、間違いだわ。


17 後に残ったものの反省や後悔は、死んだ人の重荷になりそうに思いますの。


18 騙されないで人を愛そう、愛されようなんて思うのは、すいぶん虫のいい話だ。


19 二人の結婚は美しかった。 なぜなら彼女は離婚する力を持っていたから。 二人の離婚もまた美しかった。 なぜなら彼女は友達となれる心を持っていたから。


20 自分の年とってゆくのを忘れさせてくれるのは子供しかないってことは、あらゆる生物の楽しい悲劇ですよ。






  
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