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□蝙蝠と余所者
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1.

エースは何処に行ってしまったのだろう。
ジェリコやユリウスは本当に苦労する。

さっきから館内を探すが、中々見つからない。
アリスは溜め息を吐いた。

「まさか、もう外に出ちゃったんじゃ……」

それだとますます見つけるのが難しくなる。

一度ジェリコ達と合流した方が良いのかも知れない。
そう思った時だった。

「勝手に人の部屋に入るな」

「グレタの部屋だってわかってたら最初から入ってなかったさ!」
女の人と、エースの声だ。

アリスは声のする方へと急いだ。

「痛いな離せよ!蝙蝠の癖に!」

「黙りな。迷子の癖に」

廊下の角を曲がると、カラフルな模様の黒いワンピースを着た女性がエースの耳を引っ張っているところだった。

思ったより早くエースが見つかったことに安堵する。

「すみません、エースを捕まえてくれてありがとうございます」

「アンタは……、ああ」

女性は声に出してはいなかったが、余所者とはっきり唇が動いた。

近くによると、黒いワンピースの模様だと思ったものは塗料だと言うことがわかった。
余り服装に関心は無いのだろう。

「コイツ、ユリウスに届けてあげて」

女性は短くそれだけ言うと、扉の奥に消えていった。

何だか不思議な人だ。

顔がはっきり見えたということは、彼女も役持ちなのだろう。

「本当、蝙蝠って愛想が無いよな。余所者さんは初対面だろ?」

「蝙蝠?やっぱりあの人も役持ちなのね」

「そうだよ。嫌われ者の蝙蝠だ」

意味ありげにエースが笑う。

嫌われ者?確かに気難しそうに見えたが、そこまで嫌われるような人には見えなかった。

(同じ建物に住んでるんだから、また会うこともあるわよね)

エースを逃がさないよう、しっかり捕まえ廊下を歩く。

時々、脱出を試みて暴れられたが、なんとかジェリコとユリウスに引き渡すことが出来た。

今は恒例のお説教タイムだ。

落ち着いたら、ジェリコかユリウスにあの女性のことを聞いてみよう。
 

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