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□3.諦める
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何度目か数えるのも忘れたが、私はジェリコの部屋のベッドで眼を覚ました。

別に色事ではなく、普通に睡眠不足で倒れて運ばれたのだろう。

とはいえ、

「何で毎回私の部屋じゃなくて、アンタの部屋で寝かされてるの」

私は部屋を出た覚えがない。なら、倒れていたのは自分の部屋だろう。

寝かすなら自分のベッドで良いじゃないか。

いちいち部屋を移動させる意味がわからない。

机で書類仕事をしていた部屋の主を睨み付ける。

「それはグレタが眼を覚ますなり、すぐに絵に没頭するからだろう。あれじゃあ、ちゃんとした休息にはならないぞ」

溜め息混じりに説教されてしまった。

「アンタは私に絵を描かせたくて連れてきたんでしょ。だったら絵を描かせておけばいいのに」

さっき夢で見た情景を絵に起こしたくて堪らない。

なんでコイツは私の邪魔ばかりするのか。
いっそ放っておいてくれたら良かったのに。

無理矢理部屋を出ることも考えたが、外にはジェリコの警護が控えているだろう。

部屋を出た瞬間に押し戻されるのがオチだ。

「本当に、ここに来てからろくなことが無い」

早々に出ていけるなら、そうしたい。

思わず漏れた愚痴は、ジェリコにもしっかりと届いたらしい。

ペンを置いたかと思うと、真っ直ぐにこちらに向かってくる。

「ほら、ろくなことが無い」

「あんまりそう言われると、こっちも傷付くんだがな」

ベッドの隣に腰掛けたジェリコに引き寄せられる。

特に抵抗する意味もないので、私はされるがままだ。

「グレタ」

唇が重ねられ、舌が歯列を割って入ってくる。

「……っ」

キスに気を取られていると、ワンピースの裾から大きな手が入り込む。

内股を撫でるように、ゆっくり上がってくる手に恐怖以外の感情を抱くようになってからは、順応というものの恐ろしさを知った。

「アンタはいつもここから逃げること考えているみたいだが、いい加減諦めた方がいいぜ」

きっとそうなんだろう。

どうせ、この男は私を逃がす気なんて毛頭無いのだから。

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