short
□selfish
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珍しいこともあるものだ。
どこぞにスケッチでもしにいったのか、自分の足で食堂に向かったのか。
どちらにしろ、放っておいたら何十時間帯でも部屋に籠ってるグレタのことを思えば、大した進歩だ。
画材が雑多に置かれた部屋を一瞥する。
ついでに何か足りない物が無いか確認するためだ。
グレタには画材に関しては何でも与えると言う約束をしているのだが、肝心の本人が消耗品の残量を確認していなくて制作途中で足りなくなるということが度々ある。
棚、テーブルと見て回っていると、有ることに気付く。
「スケッチに行ったんじゃないのか」
テーブルの上にはスケッチブック等が入った鞄がそのまま置いてあった。
グレタが外出するときは、この鞄を必ず持っていく。
ということはグレタは館内にいるということだ。
ならば、じきに帰ってくるだろう。
幸いまだ休憩時間は残っている。
探しに行くことも考えたが、すれ違うのがオチだし、特に用があるわけでも無い。
ジェリコは本棚の図鑑でも眺めながら待つことにした。
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「……何で居るの」
「待ってたんだよ。……遅かったな」
へとへとになりながら部屋に戻ると、何故かやたら世話焼きな家主がベッドを占拠してた。
彼が多忙なことは知っているし、日頃から居眠りしてたら起こすように頼まれているので、多少乱暴に起こした。
正直、早く帰ってほしい。
ジェリコは眼を覚ましたにも関わらず、ベッドに寝そべったまま動かない。