いかさまジャッジ
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思わず息を飲むと、双子がそれぞれの斧で銀色を受け止めていた。
銀色───剣だ。その持ち主は、
「毎度毎度、屋敷に入ってこないでよ騎士!」
「また迷子?何回目だよ、わざとじゃないよね!?」
「あはは。久し振りだね。双子君。それに……アガートさん」
ハートの騎士、エース。
眼があった瞬間、彼は不穏に口端を吊り上げ笑んだ。
その姿を見た瞬間、首筋の産毛が逆立つのがわかった。
ここから、逃げなくては。
本能だった。
一も二もなく、屋敷の奥の方へ逃げ出す。
エースは双子と、これから駆け付けてくるだろうエリオットに任せておけばいい。
だが、私は駄目だ。
私では騎士とは相性が悪すぎる。
屋敷の奥にある適当な部屋に逃げ込み、息を整える。
ゆっくりと首をさする。頭と胴が離れていないか確認するかのように。
ちゃんと繋がっている。当たり前だ。
アガートはゆっくりと床にへたりこんだ。
とにかく、疲れた。
「なんだって言うのよ、まったく……」
騎士はその凶悪な方向感覚でしょっちゅう迷い込んでくる。
そして私を見つけては、剣を振りかざす傍迷惑な奴だ。
この後も仕事が待っていると言うのに……。
窓の外では闇が溶け、また昼がやって来ていた。