いかさまジャッジ

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「アガート……!」

ガシッと、両手を掴まれる。

感極まったエリオットは力加減を知らないから結構痛い。

「俺、そんなこと考えてなかった……!そうだよな、ブラッドをただ喜ばせたいだけだったんだけど、それだけじゃ駄目なんだよな!」

まず、喜ばない。

「アガート、アンタはちゃんとこの後の仕事のことまで考えて……。すげぇよ。俺、アガートのこと尊敬する」

「……ありがとう」

こういう時の彼の眼は正面から見れない。
彼の顔が至近距離にまで迫っているので、視線を逸らすには頭ごと逸らすしかない。
かなり露骨なのだが、彼は気にしていないだろう。

いいから早くにんじん料理を持って自分の部屋に引っ込んで欲しい。




結局彼が去ったのは、他の準備がすっかり完了した後だった。

久々のオレンジ色の並ばないお茶会に、ブラッドもかなり上機嫌で紅茶を楽しんでいた。

いつもこうならば……、と一瞬遠い目をしたことに関しては見ぬふりだ。

毎回上手くいくならアガートとて苦労は無い。


ああ、そういえば今頃は絶好のチャンスだったのにサボり損ねた門番達が騒いでいるかも知れない。

ブラッドに書類仕事を渡してからも、もう一仕事ありそうだ。
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