いかさまジャッジ
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ブラッドのご機嫌取りも兼ねて、急ぎとはいえ念入りにセッティングしたはずなのだが。
テーブルの一画を占拠しているオレンジ色。
どれもこれも、頭ににんじんが付いたウサギ専用の食べ物。
「お!にんじんチーズケーキに、にんじんスコーンに、にんじんビスケット!
どれも全部美味そうだな!!」
ピョコピョコとウサギ耳を揺らしながら笑顔でやって来た、帽子屋ファミリーのNo.2。
頭を全力で殴り倒したくなる。
「アガート!久しぶりに夜の時間帯が来てブラッドの機嫌がいいっていうからよ、お茶会をするだろうと思ってシェフに予め、次のお茶会に作ってくれって頼んでおいたんだ!ビックリしただろ」
「え、ええ。ビックリしたわ」
殺意すら芽生えそうになるほど。
彼自身は私やブラッドに誉めてほしくての行動なのだろう。大半は自分が食べたいから、ではあろうが。
とはいえ、前から疑問だったがなぜ彼はブラッドがにんじん料理が好きだと思い込んでいるのか。
とんだイカレウサギだ。
「エリオット、ブラッドにはこのお茶会の後、大量に仕事してもらわないといけないのよ。
そんなに食べて満腹になってしまったら仕事がやり辛くなるかもしれない。いや、きっとなるわ。
今回は残念だけど、にんじん料理は貴方が食べて頂戴。
ああ、ブラッドの前で食べたら彼が気にするかもしれないから、エリオットの部屋で食べた方がいいかもしれないわね。そうよ、それがいいわ、そうしなさい」
最小限の息継ぎで一気に捲し立てる。
少々無理矢理な気はするが、大丈夫だろう。……多分。
当のエリオットはポカンと、呆気にとられたかと思うと、いきなり瞳を潤ませた。