いかさまジャッジ
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アガートは机の上に乱立する書類の山に頭を抱えた。
先刻、やっと仕事を全て片付け休憩を取ったの思ったのに。
部屋に帰ってみれば、いつの間にやらまた新しい書類。気が滅入る。
それもこれも夜の時間帯が何時までたってこも来ないのが悪い。
窓の外には腹がたつほど澄みきった青空が見えた。
これでは我らが帽子屋ファミリーのボスが仕事をする気になってくれないではないか。
いや、一応最小限急ぎの仕事はこなしてくれている。
ということは、ブラッドの代わりに私が仕事をするだろうことを見越して怠けているだけ?
有り得る。
洪水のように押し寄せる思考の中に答えを見つけ、また気が滅入った。
つまりは私自身がブラッドを甘やかしていたと。
なんということだ。
飛んでも無い上司を持ってしまったと、過去何百回吐いたかわからない溜め息を吐く。
それでも、転職などとは露とも考えない。
ただ、目の前の書類を片付けるのみだ。
ふと、首筋にひやりとした物を感じた。
滑らかな布のような。
そういえば、部屋が薄暗い。いつの間にか夜の時間帯になっていたのだ。
考えてる間にもひやりとした物は首筋を這い、鎖骨から更に下へと降りようとしていた。
それを、思いっきりつねりあげる。
「……っ」
微かに息を詰める声が背後から聞こえた。