蝙蝠は夢想する
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「いつまでたっても思うようにならないから力尽くってわけ?」
銃を構えながらジェリコ達を見据える。
役持ちが相手の上、多勢に無勢では分が悪すぎた。
冷や汗が背筋を伝う。
「力尽くじゃない。正々堂々と差し押さえに来た」
言いながらジェリコは書類を数枚見せてくる。
一枚は家の権利書。
他は馴染みの画材屋、パン屋などの店名と金額が書き連ねられていた。
「っ……!」
その意味に気付いた時、隙をつかれ腕を後ろに捻り上げられた。
痛みで銃を取り落とす。
「ま、要するに今はこの家の大家は俺だ。グレタ、アンタ随分と家賃溜めてたんだな。それごと買い取った。
ついでに他の店のツケとかも全部俺が回収を引き受けたって訳だ。
で、今はその取り立てに来た。アンタも含め、この家のものは全部差し押さえる」
まるで子供にでも言い聞かせるようにゆっくりと説明される。
冗談じゃないと口を開こうとした瞬間、口元に布が宛がわれた。甘い匂いが鼻腔に広がる。
「悪いようにはしないさ。これからよろしくな」
ジェリコの言葉を最後まで聞くこと無く、グレタの思考は暗転した。