蝙蝠は夢想する
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私は静かに生活したかった。
この国では小競り合いが多く、私自身が参加したことも珍しくない。
とはいえ、来訪者がこうも頻繁に来るのは望んでいない。
今も、しつこくドアがノックされている。
「グレタ!いい加減出てきてくれよ」
中でも、今外にいる墓守───ジェリコはダントツにしつこい。
「頼むよ。一枚でいいからアンタの描いた絵を、ウチの美術館で飾らせて欲しい」
「何度も断った。面倒だし嫌。とっとと帰って」
「そう固いこと言わずに……」
この数十時間帯の間に何度となく繰り返された問答だ。
どうやらジェリコはグレタが支払いに困って画材屋に現金の代わりに置いてきた絵を見たらしい。
以来、美術館に絵を飾らせてくれと頼み込みに来るようになった。
(どうせコウモリの描いた絵なんて、美術館に置いても誰も見ないでしょうよ)
グレタはコウモリだ。
完全な鳥でもなく、完全な獣でもないようにどこの領土にも属さない。いや、属せない半端者。