蝙蝠は夢想する
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連れてこられたのは広い食堂だった。
人が多くて、落ち着かない。
ジェリコに案内され空いている席に座る。
周囲がざわついたのが解った。
「アンタ、腹が減ってるだろ。取り敢えず何か食っとけよ。何がいい」
「何でもいい」
そもそも何があるか知らない。
ぶっきらぼうに言えば、じゃあ俺と同じでいいなとジェリコは注文をしに行った。
一人席に取り残されると、周りの声が嫌でも耳に入る。
───蝙蝠だ
───なんで蝙蝠が
───物好きな
───どうして
何食わぬ顔をするので精一杯だ。
耳を塞ぎたい。絵を描きたい。
創作に没頭して周りが眼に入らないよう───
「待たせたな」
目の前に皿が置かれる音で正気に戻る。
食欲を刺激する匂いに、自分が相当空腹だったことを思い出した。
「……カレー?」
「アンタ、今にも倒れそうだからな。これならすぐに出てくるし。嫌いだったか?」
向かいに座ったジェリコも、同じようにカレーを注文したらしい。
返事の代わりに一口食べる。
正直、美味い。
まともな食事は久し振りなせいか、思わずスプーンを口に運ぶペースを速めそうになるが、墓守の前だ。すんでのところで堪える。
終始無言だったのだが、ジェリコは特に何も言わなかった。
互いに食べ終えたところで、ようやくジェリコが口を開く。