short


□あの夢の中で、きみとぼくは
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『…ま、みどりま、緑間!!』





『…あ、おみね?』

いつの間にか眠っていたようで、辺りを見回すと、ここは見慣れた教室だった。
あれは夢だったのかと一息付くと同時に、いつも通りの教室の違和感に気付く。
ゆっくりと思考を巡らせると、すぐにその違和感の正体に気付いた。
何故か俺と青峰の二人しかいないのだ。
時計を見るとまだ普通に授業をしている時間で、少し不安なったのだが不思議とそのことについて聞く気にはならなかった。
もっと、大事な事を話さなければいけない気がして。

『お前が授業中寝るなんて、明日地球滅びんじゃねーの?』

そういってけらけら笑う青峰の顔面に、今日のラッキーアイテムのボックスティッシュを思い切り投げつけてやった。
痛い痛いと騒ぐ奴を鼻で笑いながらも、まだ鮮明に残る夢の記憶を脳内で再生した。

『青峰…』

『あ?』

『夢を…見たのだよ』

『夢ェ?』

俺の話を聞きながらも、ティッシュの角が当たって赤くなった鼻頭を抑えている。

『…暗くて、誰もいない町を、1人で、おまえを探し回る夢…だ。
みんな死んでしまって、家族も、高尾も、宮地先輩も、木村先輩も、キャプテンも、みんな、誰もいなくなってしまって、それで…怖くて、必死にお前を探してたのだよ…』

話しながら頬には涙が伝っていく。
拭われないそれは重力に従いポタポタと机を濡らしていった。

本当に怖かった。
不安に押しつぶされそうだった。
けど、俺はそれでも探したのだ。
ここで諦めたら二度と会えないような気がして。
二度とお前の声も、体温も、身体も、青峰大輝という人間を感じられないような気がして。

そんな俺の不安を打ち消すように、褐色の腕が少々乱暴に背中に回された。
筋肉がしっかり付いた腕はお世辞にも柔らかいとは言えず、決して気持ちよくはないけれど、俺を落ち着かせるには十分だった。

『どこにもいかねぇよ、俺は』

『…絶対、なのだよ』

『ったりめーだバァカ』


暖かな日溜まりの中で俺達は静かに微笑み、そして触れるだけのキスをした。






















滅んだ世界の中。
明るい日差しが差し込む教室で、亡骸が2つ。



end…

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