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□あの夢の中で、きみとぼくは
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ある日の休み時間、次の時間に備えて自習をしていると、眠っていた青峰が突然むくりと起き上がり、まじめな顔で後ろの席の俺を振り返った。
トイレと昼と放課後以外でこいつが起きるなんて珍しい、と思いつつ奴の顔を見つめていると、少し置いて口を開いた。

「なぁ緑間、明日地球が滅ぶって言われたらお前どうする?」

「は?なんだ突然」

いきなりすぎて気の抜けた声が出てしまった。
明日地球が滅んだらって、小学生かお前は。

全く、どうしてこんなのを恋人に選んでしまったのか自分でも理解できない。
バスケ馬鹿でアホでガングロで蝉でザリガニのこいつを。

そんな俺を余所に青峰はアホな言葉を続ける。

「昨日堀北マイちゃんが出てる番組見てたらよ、マヤ?っつー女が二年後の今日地球が滅ぶって予言したんだとよ。
それ思い出したから聞いてみただけだ」

「…ふん、内容も理由も下らん。
マヤの予言など、ただの推測に過ぎん。
そんなもので滅びる地球ならとっくの昔に滅びていても可笑しくないのだよ。
それにもし予言通り滅びたとしても、それはそれで受け入れるしかないだろう?」

「人事を尽くす、じゃないのか」

「地球規模の問題なら俺1人が人事を尽くしたところでどうにもならんだろう。
だから、その日がきても後悔しないよう毎日人事を尽くすのだよ」

「っはは、お前らしいや!」

「…ついでに青峰、一つ訂正してやろう。
マヤとは女性ではなく太古の文明の名前だ」

「なん、だと…!?
つーか太鼓の文明ってなんだ?」

「…さぁな」


.
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懐かしい、あの日から二年が経った。
下らないと嘲笑ったマヤの予言は当たってしまい、地球もとい人類は滅んだ。

午後2時頃、青く晴れ渡った空に突然発生した積乱雲、そして誰も予測しなかった異常気象に人類は為すすべもなく、数時間で人類はほぼ全滅してしまった。

秀徳高校バスケ部も、俺以外皆もういない。


木村さんと大坪さんは落雷が直撃して即死、宮地さんは波にさらわれ消えてしまった。
最後の最後まで俺と生き残っていた高尾は、崩れ落ちてきた天井の下敷きになった。


必死に瓦礫を退かせる俺の手を優しく包み、言われた最後の言葉とあの笑顔を俺は忘れない。

「…おれ、さ、いろい ろ、あったけど、真ちゃ んとバスケでき、て、しあわせだ ったよ…相棒で 、いさせてく れて あ りが  とうね」

「高尾、やめろ、そんな、最後みたいな」

「好き だっ  たよ、真ち  ゃん

し   あ わ  せ  に  な    っ  て 」




大事な人たちがどんどん死んでゆく。
家もなくなってしまった。
家族も居なくなってしまった。


炎と死臭に包まれた町を、俺は1人歩いていく。
いつも高尾と通っていた道のはずなのに、まったく知らない別世界のように思えた。
道端に寝そべり、死にたくない死にたくないと喚く人、既に虫の息でいつ死んでも可笑しくない人、既に息絶えた人。
そんな人々を横目に町を行く宛もなく歩き回る。



昔、学校帰りに寄った駄菓子屋。
紫原がよくここで大量の駄菓子を買い込んでいた。
赤司が駄菓子を買う光景は思った以上にシュールで、笑いを堪えきれなかった青峰と黄瀬が制裁を食らっていた。


黒子が大好きだったマジバ。
甘すぎないバニラシェイクは黒子だけではなく俺も結構気に入っていた。
期間限定で冬だけ飲めるおしるこシェイクは俺のドストライクで、その時期だけ毎日黒子と一緒に寄っていた。
高校になって、先輩や高尾と来ることも少なくなくて、宮地先輩が店内に張ってあるアイドルのポスターを欲しがっていた。


店員に名前も顔も覚えられてしまったコンビニ。
店員全員が俺の顔も名前も知っていた、と知ったときの俺の衝撃は今でも忘れない。
毎日おしるこを買う人間など俺くらいだっただろうから顔を覚えられるのはともかく、まさか名前まで知られてるとは思いもしなかった。
店員の1人がバスケをやっていて、月バスを読むのが趣味だと言っていたのでやっと納得した。


思い出のたくさん詰まったこの町を、ひとつひとつ記憶と結び付けながら歩いていく。
もう、二度と見ることのない光景を頭に描きながら。

絶望と不安と悲しみと、負の感情を押しのけて歩く。

俺の最後の希望。

「青峰…ッ」




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