short


□日曜日
2ページ/2ページ


時刻はまだ午前8時30分。
朝食を作ろうと思ったが、黄瀬がいつ起きるか分からないので断念した。
仕事中は弁当やパンで軽く済ませているという彼には、休みの日くらい温かい出来立ての食事を食べさせてやりたい。
俺の自己満足でしかないが、それで彼が喜んでくれればそれに越したことはないだろう?


仕方がないので俺は自分の分だけコーヒーを淹れて、テレビを付けた。
鼻を擽る香ばしい香りとともに流れ出す軽快な音楽と、画面いっぱいに広がる黄瀬の笑顔。
黄瀬の出ているCMは全部チェック済みだが、このCMははじめて見た。
どうやら最近新しくできたファッションモールのCMらしい。

さらさらとした髪の長い女優と恋人のように手をつないでいる。
というか恋人役なのだろう。
楽しそうに笑う二人が印象的なCM。

ーー最後に、黄瀬と手を繋いだのはいつだっただろう。



『みーどりまーっち!』

いつのに間に起きていたのか。
突然後ろに現れた黄瀬に驚いてコーヒーをこぼしそうになった。

『あっ、このCM今日から放送だったんッスか!
この撮影の時、すっげぇ寒くて大変だったんスよー?』

そんな俺をソファーの後ろ側から抱きしめながら、撮影の裏話を楽しそうに語り始める。
寝起きのくせに元気な奴だ。



さて。

『黄瀬』

『はいッス?』

寝起きの髪の毛をふわふわさせながら首を傾げる。
そんな姿も様になるのはさすがモデルといったところか。

だが、こんなふにゃりとした表情はどのチャンネルでも、どんな雑誌でも見れはしない。
俺だけ許された特権。


『朝食を食べたら、出掛けないか?』

『…さっきのCMみて妬いちゃったッスか?』

『悪いか?』

フッと不適な笑みを向けると、満足そうな満面の笑みが返ってきた。

『全っ然!
いやぁ、がんばった甲斐があったッス!
撮影中、これ見て緑間っちが妬いてくれたらいいなぁーなんて思ってたんスよー!』

なるほど、まんまとコイツの策にハマったというわけか。

非常に不愉快だが…たまには悪くない。
が、仕返しはさせてもらうぞ。


『フン、早く着替えてくるのだよ。
今日は日曜日だ。混む前にさっさと出掛けるぞ…涼太』

『っ!!
…じ、じゃあめっちゃ急いで着替えて来るんで朝食よろしくッスね!真太郎!』

『あぁ、まかせろ』


顔を真っ赤にしてバタバタとリビングを出ていく背中を見届けて俺は台所へと足を向けた。



朝食は何にしようか?


(end)




あれ?

なんか黄緑?緑黄?な緑間と黄瀬の将来のお話。

ーちょい設定ー
○黄瀬→高校卒業後、大学には行かずタレント(兼モデル)として活躍中。
○緑間→高校卒業後、大学進学。大学卒業後は大企業で働いている。

ちなみに二人が同棲を始めたのは真ちゃんが大学卒業してからです。


というわけでお粗末様でした。



テスト期間中の葉山玲斗。
(11月29日(木))
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ