「余計なお世話、だよねぇ」


明るい口調で言う


「余計?クリスタルのご加護なのに、ですか?」


言葉の意図を図りかねてか、クイーンは首を傾げる。


眼鏡の奥の瞳は、訝しげな色に、少しの怒り


咎める目付きに、笑って見せる



「『生きるために忘れさせる』、なんてさ」

わかってもらおうとは思わない、ただ僕は、君に伝えたいだけ。


「余計なお世話だって〜。自分の記憶くらい、自分で好きにさせて欲しーよ〜」

「ジャック、そんな事を言っていると罰が当たりますよ」


真面目でまっすぐで、

マザーとクリスタルに従順な君は感じないのかな


口に出す代わりに、僕はまた笑った。



「君も、忘れちゃったのかな」


「誰をですか?」


聞き返す声に、僕は答えられない。




たしかに、いたはずなんだ


僕のすぐ隣に

今の君と同じように。



君の隣には僕が

僕の隣には─…


「やー、僕も覚えてないんだけどさぁ〜」


大袈裟に溜息をつく


「?? 相変わらずジャックは訳が分かりませんね」


君の、丁寧だけどきつい言葉の後に


何かが物足りなくて





いたはずなんだ



君の隣には僕が、

僕の隣には、十番目の誰かが。



君がいて、僕がいて

もう一人、いたはずなんだ。




「ふしぎだよねぇ〜」



今、たしかに隣に君の存在を感じるのに


この確かな記憶さえ、また消えてしまうのかな。


いつか、その誰かのように忘れてしまうのかな。



僕は、その誰かのことも、君のように大切に思っていたのかな?


「勿体ないよねぇ〜」


「はい?」


君は、感じないのかな。


だって、今はこんなに傍にいるのに


覚えていられないことが、こんなにも口惜しい。




君も、いつか僕より先にいなくなって


僕は今話したことも忘れてしまうのかな


大切に思っていたことも、忘れてしまうのかな



「君は、忘れてもいいよ?」


別に、構わない


大事な気持ちを失くして、

失くなったことすら気付かないくらいなら


いっそ君に忘れられても、この気持ちを持ち続けていたい



「……私より先に死ぬ気ですか?」


「さぁね〜」


あいまいに、笑う


わかってもらおうとは思わない、ただ僕は、君に伝えたいだけ。


僕は、君といた時間を大切にしたいんだと。



バシッ


「…─って!」


目にも留まらぬ早さで頭を叩かれた


頭を抱えて顔を上げると、目を吊り上げた君の顔


眼鏡の奥に、冷ややかな瞳



「要は一緒に生き残れば良いだけでしょう!!」



いつも、厳しい言葉で、冷たい言葉で律する、君の口から


夢物語のような、希望的観測



「…─ははっ!」


「笑い事じゃありません!」



知っている


ただ君は、僕に教えてくれているだけ。



今一緒にいることを、大切にするべきなのだと



失うものを数えるのではなく


護っていくものを大切にするのだと。



「わかったよー、クイーン」



失ったものの分まで、今、傍にあるものを大切にするのだと。





end




ありあとーございましたー!


ジャックの10番目がらみな話を書きたかったのです。

ポジション(配列?)的に本当はナインでやりたかったのですが

やっぱりおにゃのこを出したかった…


寝ぼけなから作ったせいかテンソンがヤヴァイ…(_ _)


ありあとーございましたーzzz


20120227


キャラ崩れてないかが心配



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