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□過去に延ばす手
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朝目覚める度、延ばした手が空を切る




延ばした手を掴まずに、あいつらはただ笑っていた。











今でも、夢に見る




二人に手を延ばした、あのシーンを。




延ばすことしかできなかった、



届かなかったこの手は、何の役目も果たさなかった。






今、この手は


かつてコクーンで暮らしていた人々のために動いている。



崩壊した、それまでの暮らし



今までとは全く違う、不便で力を要する生活。



それでも、人々は次第に順応してきていて、新たな未来へと歩き出している。





これが、人間の強さ、か─…




再生していく人々の暮らしを見守りながら思った。




スノウは、セラとの結婚の景気付けにと、再建の活動に率先して取り組んでいて


ホープもサッズも、家族との生活を必死で作っているらしい。




何もかも、順調で、問題なく進んでいる



何もかも、良い方向に進んでいるのに








毎夜、夢に見る





掴まれずに、ただ延ばすだけの腕





あの笑顔






この手を掴まず、互いの手を固く握り合う二人を、



ただ虚しく見ていた。









どんなに平気なふりをしても




この手から空しさが込み上げてくる。






諦められない



諦められるはずもない








クリスタルと化した、かつてのコクーンに手をかざす。







教えてくれ



どうしたら、この空しさが収まるのか



どうして、共に背負わせてくれなかったのか─…






「そんなに、頼りなかったか」





笑う。



嘲るように




ちっぽけな自分を。





夢の中でさえ届かないこの手は、どこへ延ばせば二人に届くのか。





手が、空を掴む






仲間の罪さえ背負えないこの腕で、一体何ができるというのだろう









『ごめんね』








響いた声は、あまりにも優しげで







『大丈夫だよ』







『お前らならできると思ったから、任せたんだ』







『お前らの故郷だろ?』







届かない、この手を


あたたかな風が撫でる。






わかっている、二人は


手を掴まないかわりに、この世界を託して。




わかっている、この手は


二人が救った、この世界を守るためにあるのだと。





それでもあの時、


この手が届かなかったことがただ悔しくて



二人を求める気持ちは、収まらなくて。






わかっている、きっとこの手は



二人がこの手を掴みにくる日まで、延ばし続けているのだ。







end





EDでライトさんが2人に手を延ばしていたと思い込んで作ったお話でした;サーセン


『My Hands』があんまりにもライト→ヲルバだったもんだから作ってしまいました。


あの時、2人がコクーン組の手を掴まなかったことが

何より悲しくて何より悔しかったのです…


ここまでありがとうございましたー!


2010.03.28

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